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リアルタイム患者被ばく線量計を開発

2014.10.17

 X線透視はさまざまな医療に使われている。その際のX線被ばくをどう監視するかが課題だ。患者の放射線障害を防ぐため、リアルタイムで被ばく線量を簡単に測れる装置を、東北大学大学院医学系研究科・災害科学国際研究所の千田浩一(ちだ こういち)教授らが開発した。4センサーを備えており、同時に4カ所の皮膚の被ばく線量を測定でき、皮膚障害や脱毛を起こす線量に達するとわかれば、その前にX線照射をやめることができる。早ければ年内にも商品化する。米国医学物理学会が発行するMedical Physics 10月号に発表した。

 X線透視下で体内に細い管(カテーテル)を入れて病気を治す方法は、がんや心筋梗塞、狭心症などに有効だが、症例によってX線透視撮影時間が長引くため、患者の被ばく線量の増加が問題となっている。こうした治療による放射線障害が現在でも報告されており、その防止が求められている。放射線障害の回避には、急性障害が発生する線量を超える前にX線照射を中断する必要があり、患者被ばく線量のリアルタイムの正確な測定が鍵を握る。リアルタイム線量計はこれまでも製造されたが、センサーが有害物質であったり、X線画像の障害陰影になったりする欠陥があり、現在は使われていない。

 研究グループは、センサーに用いる蛍光体を探索した結果、酸硫化イットリウム系の蛍光体が毒性もなく、X線に対して高感度で、劣化しない特性を見いだした。酸硫化イットリウム系の蛍光体センサーと光ファイバーケーブル、フォトダイオードなどを組み合わせて、4センサーをもつマルチセンサー型リアルタイム患者被ばく線量計を開発した。

 これにより、X線透視の邪魔をせずに高感度なリアルタイム被ばく線量測定が可能となった。4カ所の皮膚で同時に測定できる線量計を試作することで、1カ所の測定だけでは難しかった最大被ばく線量をより的確に測れるようにした。国内で特許公開され、国際特許も出願した。

 開発した千田浩一教授は「フォトダイオードを使い、X線に感度のある最適な赤色蛍光体を見つけたのが開発につながった。4センサーあるので、患者の最大被ばく線量をモニターするのに使いやすい。被ばく線量が増えるX線CT断層撮影などの際にも使える。日本だけでなく、世界の医療現場で重宝されるだろう」と話している。

マルチセンサー型リアルタイム患者被ばく線量計。X線入射皮膚面に貼付するセンサー(左)は4カ所まで同時測定が可能。
写真. マルチセンサー型リアルタイム患者被ばく線量計。X線入射皮膚面に貼付するセンサー(左)は4カ所まで同時測定が可能。
(提供:東北大学)

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