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ノーベル賞予測で再び理研の十倉好紀氏

2014.09.25

十倉好紀・理研センター長
写真. 十倉好紀・理化学研究所 創発物性科学研究センター長(提供:理化学研究所)

 国際的な学術情報企業のトムソン・ロイターは9月25日、ノーベル賞発表に先駆け、「トムソン・ロイター引用栄誉賞」(ノーベル賞受賞者予測)を発表した。十倉好紀(とくら よしのり)理化学研究所創発物性科学研究センター長(併任・東京大大学院工学系研究科教授)ら9カ国の27人を選んだ。

 十倉氏は「新しいマルチフェロイック物質の発見」の功績で、2度目の選出になった。マルチフェロイックは強磁性、強誘電性、強弾性などの性質を複数有する物質系で、新しい物質の開拓やデバイスへの応用が期待されている。十倉氏は2002年にも「超伝導化合物の発見を含む、強相関電子酸化物に関する傑出した研究、および巨大磁気抵抗現象に関する研究」で選ばれている。同賞が02年に恒例化して以来、ひとりの研究者が異なるテーマで2回選出されるのは初めて。十倉氏の極めてアクティブな研究活動を印象づけた。

 十倉氏は「マルチフェロイック物質やそれを用いた巨大電気磁気効果の研究は、開始して10年少しだが、現在は、より広く『トポロジーと磁性』に ついての研究へと発展中だ。この間の進展には、共同研究者の方々に非常に多くを負っており、深く感謝したい。新しいトムソン・ロイター引用栄誉賞をビタミン剤に今後も研究に精励したい」と語った。

 十倉氏は1954年兵庫県生まれ。60歳。東京大学工学部卒、同大学院を修了し、工学博士。1995年から東京大学大学院工学系研究科教授、2013年から理化学研究所創発物性科学研究センター長。「強相関電子材料の研究」を開拓した物性物理学者として内外の多くの賞を受賞している。マルチフェロイック分野の十倉氏の論文は1999年以降に発表されて、2010年前後から引用が急増し、これまで7000件以上の論文に引用された。

 今回、韓国科学技術院(KAIST)の劉龍(リュ・リョン)教授が、化学分野のメソ多孔体材料に関する研究で、韓国から初の選出となった。トムソン・ロイターは「韓国や中国の科学には勢いがあり、10年以内にノーベル賞が出てきても驚かない」とみている。

 トムソン・ロイター引用栄誉賞は同社のデータベースで論文被引用数が各分野の上位0.1%に入る研究者から選ばれる。世界の研究者の総意が反映する形になっている。医学生理学、物理学、化学、経済学の4分野で昨年まで211人が選ばれ、うち35人がノーベル賞を受賞している。昨年の受賞者のうち8人はトムソン・ロイター引用栄誉賞の受賞者だった。

 日本人では、ノーベル賞を2012年に受賞した山中伸弥京都大学教授と2人の故人を除く16人のトムソン・ロイター引用栄誉賞受賞者には、ノーベル賞受賞の可能性が残っている。この評価は最近の論文引用数に基づいており、ノーベル賞の選考基準と一致するわけではなく、あくまでも受賞者予測のひとつと位置づけられる。今年のノーベル賞の発表は10月6日から。

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