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タンパク質が2つ協働してRNA認識

掲載日:2014年8月19日

2種類のタンパク質がメッセンジャー(m)RNA前駆体を協働的に認識して選択的プロセシング(加工)を制御し、筋肉で働くように加工していることを、東京医科歯科大学難治疾患研究所の黒柳秀人(ひでひと)准教授らが線虫で初めて確かめた。同様のRNAの認識、制御、加工の仕組みは哺乳類を含む生物に広く存在するとみられている。

遺伝子DNAからmRNA前駆体が転写され加工されてmRNAとなり、それからタンパク質が作られる。たくさんのmRNAの加工が組織や細胞ごとに巧妙に制御される仕組みは「細胞暗号」と呼ばれているが、完全には解明されていない。その細胞暗号を解く手がかりとして今回の発見は注目される。武蔵野大学薬学部の武藤裕(ゆたか)教授と桑迫香奈子講師、理化学研究所の髙橋真梨リサーチアソシエイト、京都大学大学院医学研究科の萩原正敏教授らとの共同研究で、8月17日付の英科学誌Nature Structural & Molecular Biologyオンライン版で発表した。

多細胞生物は、細胞の種類によってmRNAの加工の仕方を変え、1つの遺伝子から多様なタンパク質を作って、生命活動を営んでいる。mRNAの加工を制御しているのはさまざまなRNA結合タンパク質である。しかし、1種類の結合タンパク質が認識するのはRNAの4~6塩基ほどの短い配列がほとんどで、たくさんの種類のmRNAの加工を正確に制御できる仕組みが謎だった。

研究グループは、2種類のRNA結合タンパク質が特定のmRNA前駆体に結合している状態の立体構造を理研の核磁気共鳴(NMR)装置で解析した。2つのタンパク質は、RNAの7番目の塩基グアニン(G)をサンドイッチのように挟み込むことで互いの位置がしっかりと固定して、全体としてUGCAUGGUGUGという11個の塩基の配列を正確に認識していることを突き止めた。

また、2つのタンパク質を構成する4つのアミノ酸が7番目の塩基のGを挟み込んで、しっかり固定して、このサンドイッチ認識を補強していた。線虫の実験で、7番目のGを異なる別の塩基に変異させると、正しくmRNAを加工できなかった。さらに、mRNAの正しい加工には、各タンパク質が結合するUGCAUG配列とGUGUG配列が隣り合っていなければならないことも実証した。

今回の2種類のタンパク質やRNAの結合部位の配列は、ほ乳類までの動物で広く保存されており、多細胞生物のモデル動物の線虫だけでなく、ヒトも含む多くの動物で普遍的に存在している、RNA加工の共通の仕組みの可能性が高い。1つのタンパク質だけよりも、2つのタンパク質が協働して結合すれば、RNA加工の制御の精度は飛躍的に上がる。研究グループは「今回の発見はRNA加工の細胞暗号の体系的な解読につながる」と期待している。

研究グループの黒柳秀人准教授は「ヒトの遺伝子は2万数千個と当初予想されていた数より少なかったが、RNAへの転写後の加工で多様なmRNAひいては多様なタンパク質ができるので、RNA加工の制御は転写制御にも劣らないほど生物学的に重要な遺伝子発現制御だ。これまでは、RNAに結合するタンパク質が個別に研究されてきた。しかし、細胞暗号を正確に解くには、RNA結合タンパク質の組み合わせを意識していく必要があるだろう」と話している。

2つのタンパク質がサンドイッチのようにRNAの塩基Gを挟み込む立体構造の模式図
図. 2つのタンパク質がサンドイッチのようにRNAの塩基Gを挟み込む立体構造の模式図

線虫の蛍光顕微鏡写真。左はRNAが野生型で、2つのタンパク質が働いて筋肉型(紫色)に加工される。右は7番目のGを異なる別の塩基Aに変異させた場合で、正しくmRNAを加工できず、非筋肉型(緑色)になった。
写真. 線虫の蛍光顕微鏡写真。左はRNAが野生型で、2つのタンパク質が働いて筋肉型(紫色)に加工される。右は7番目のGを異なる別の塩基Aに変異させた場合で、正しくmRNAを加工できず、非筋肉型(緑色)になった。
(いずれも提供:黒柳秀人東京医科歯科大学准教授)
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