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宇宙の錬金術師は中性子星の合体か

掲載日:2014年7月22日

宇宙の元素形成の研究で新しい成果が生まれた。地球上に存在する金や銀、ウランなど鉄より重い元素が中性子星の合体によってつくられた可能性が高いことを、理化学研究所理論科学連携研究推進グループの和南城伸也(わなじょう しんや)研究員と京都大学基礎物理学研究所の関口雄一郎特任助教らがスーパーコンピューターの数値シミュレーションで突き止めた。

計算結果は、太陽系で観測される重元素組成とほぼ一致した。宇宙の重元素の起源に新しい手がかりを与えるものとして注目される。米科学誌The Astrophysical Journal Lettersの7月10日号に発表した。

水素やヘリウムは宇宙の始まりのビッグバンで生まれ、それより重い鉄までの元素は恒星内部の核融合により生成される。レアアース、金、ウランなど鉄よりさらに重い元素は、大量の中性子の核融合で生成されると考えられているが、この「宇宙での錬金術」がどのような天体現象で起きるかは謎だった。超新星爆発では中性子の量が不足し、中性子星の合体では90%以上が中性子のため、非常に重い元素だけがつくられる。いずれも、太陽系や他の恒星で観測される重元素組成を説明できなかった。

研究チームは、東京大学のスーパーコンピューターで、一般相対性理論とニュートリノの影響を考慮した場合の2つの中性子星(ともに質量は太陽の1.3倍、半径12km)が互いに回りながら合体し、物質が放出されるまでの間の数値シミュレーションを行った。このシミュレーションによる再現で、中性子の一部がニュートリノを吸収して陽子に変わるため、中性子の割合が60~90%程度にまで減少することを見いだした。

この結果を基に元素合成の数値計算をしたところ、観測による太陽系の重元素分布とほぼ一致した。今まで明らかにされていなかった金やウランなどの鉄より重い元素の起源は、中性子星の合体である可能性が高いことがわかった。

研究チームの和南城伸也理研研究員は「超新星に比べて、中性子星の合体は複雑な現象なので、シミュレーションが難しかった。われわれの研究で、中性子の割合が程よく減って、多くの重い元素が形成できることが初めてわかった。中性子星の合体は宇宙のどこかで時々起きている。これが地球にも存在する重い元素の起源だろう。現在、神戸市にある理研のスーパーコンピューター『京(けい)』で同様のシミュレーションを追試している。大筋は変わらないが、より精度の高いデータが出るだろう」と話している。

スーパーコンピューターによる中性子星合体の数値シミュレーション。左は2つの中性子星の合体の瞬間、右は合体から8ミリ秒後の様子(距離のスケールの違いに注意)。
図. スーパーコンピューターによる中性子星合体の数値シミュレーション。左は2つの中性子星の合体の瞬間、右は合体から8ミリ秒後の様子(距離のスケールの違いに注意)。上は物質の密度の対数値(g/cc)、下は物質中の中性子の割合(%)。右下の黄色からオレンジの渦状部分で金やウランなど、青から水色の部分で銀やレアアースなどがつくられる。

観測による太陽系重元素組成と数値計算による重元素組成の比較。元素分布を質量数で表す。
グラフ. 観測による太陽系重元素組成と数値計算による重元素組成の比較。元素分布を質量数で表す。例えば、銀は107、109、レアアースは約140~180、金は197、ウランは235、238など。左は従来の結果(ここでは中性子の割合を95%と設定)、右は研究グループによる研究結果で、太陽系の元素組成とよく一致する。
(いずれも提供:理化学研究所)
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