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動物やヒトの頭部形成の仕組み解明

掲載日:2014年7月14日

ハエからヒトまで動物の頭部を形成する分子レベルの仕組みを、東京大学大学院理学系研究科の平良眞規(たいら まさのり)准教授と安岡有理(ゆうり)博士(現・沖縄科学技術大学院大学特別研究員)らが解明した。この共通の仕組みが保存されながら、動物ごとに異なる形態の頭部ができてきた進化の道筋をたどる新しい手がかりになりそうだ。東京大学大学院新領域創成科学研究科の菅野純夫教授と産業技術総合研究所の浅島誠フェローらとの共同研究で、7月9日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。

遺伝子のスイッチを操作する遺伝子制御タンパク質のOtxは、明確な頭部をもつ左右相称動物に存在し、初期胚の頭部形成に関わることが知られていた。1990年代初めには、脊椎動物の頭部の形成に関わっている遺伝子制御タンパク質として、Otx、Lim1、Gscが立て続けに発見された。しかし、さまざまな形態をもつ頭部の形成に、なぜ同じタンパク質のOtxが共通に関わっているのか、謎だった。研究グループはツメガエルの胚で、頭部形成の仕組みを調べた。ネッタイツメガエル胚でOtx、Lim1、Gscのタンパク質ができないようにすると、オタマジャクシに頭が形成されなかった。一方、Otx、Lim1のタンパク質を増やすようにした合成mRNAのカクテルをアフリカツメガエルの胚に注入したところ、本来は腹部になる部位に頭が形成された。

最新の次世代シークエンス技術を駆使して、Otx、Lim1、Gscがそれぞれ制御する標的遺伝子をネッタイツメガエル胚で網羅的に解析した。その結果、ツメガエルのOtxタンパク質は、さまざまな遺伝子のスイッチである制御領域に結合し、遺伝子制御タンパク質のLim1と一緒に、数百種類の標的遺伝子を活性化する一方で、Gscと一緒になって、別の数百種類の標的遺伝子を抑制することを突き止めた。

その結果、頭部形成のシナリオがわかった。まずOtxは胚の中で頭部という場を決める。その場でどのような形態を作るかは、Otxが一緒に結合する他の遺伝子制御タンパク質で左右される。頭部形成に必要な遺伝子を活性化しつつ、頭部形成を妨げる遺伝子を抑制して、ハエからヒトまで動物はそれぞれ異なる形の頭部を進化させてきたことがうかがえた。

研究グループの平良眞規准教授は「遺伝子の制御に基づいて、左右相称動物に共通する頭部形成の仕組みを明らかにした。この研究で、発生における転写制御の分子メカニズムから進化の仕組みを考えるという、進化発生生物学の新しい道を開いた」と意義を強調している。

ネッタイツメガエルの正常胚(上)と、Otx、Lim1、Gscの機能喪失による頭部欠損胚(下)
写真1. ネッタイツメガエルの正常胚(上)と、Otx、Lim1、Gscの機能喪失による頭部欠損胚(下)

アフリカツメガエル胚で、Otx、Lim1の合成mRNAを4細胞期の腹側に顕微鏡下で注入して、第2の頭部を誘導した実験
写真2. アフリカツメガエル胚で、Otx、Lim1の合成mRNAを4細胞期の腹側に顕微鏡下で注入して、第2の頭部を誘導した実験
(いずれも提供:平良眞規東京大学准教授・安岡有理博士研究員)
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