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強い茎を持つ超多収イネ品種に道開く

2014.07.10

 強い茎を持って倒れにくく収量の多いイネをつくるのに、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの平野恒(こう)特任助教や北野英己(ひでみ)教授らが成功した。草丈を小さくしなくても倒伏しない超多収穀物という育種の新しい戦略に道を開く成果として注目される。7月3日付の米オンライン科学誌プロスワンに発表した。

 20世紀後半の「緑の革命」による穀物生産量の飛躍は、コムギやイネの草丈を小さくして倒れにくい品種が開発されて達成された。しかし、地球全体の人口は増え続けており、穀物の収量をさらに増やすことが急務で、第2の「緑の革命」が待望されている。研究グループは「今以上の超多収品種を実現するには、草丈をさらに低くするのは限界で、強靱な茎を持つ新品種づくりが必要」とみてイネの品種改良を試みた。

 まず、1000以上のイネ突然変異体の中から茎の強度が特に高い値を示すイネを探しだし、SMOS1という遺伝子に変異が入ったsmos1イネが茎を強くすることを突き止めた。茎の強度は元の品種の2.1倍もあったが、収量は半分以下だった。次に収量は高いが、茎が弱いイネ系統ST4を片親にsmos1イネと掛け合わせた。その結果、smos1の茎の強さとST4の多収性を併せ持つイネ系統LRC1ができあがった。

 このLRC1は、茎の強度がST4の1.8倍あり、収量もST4並みの多収性を示していた。研究グループは「茎が強いという従来とは異なる性質に着目して、倒れにくい穀物を目指せる可能性を示した。今回見いだした強い茎の性質は、超多収穀物の開発に貢献するだろう」と期待している。

茎が強いsmos1と多収性のST4を掛け合わせてできたLRC1。それらの系統の茎の強度・収量の比較。
図. 茎が強いsmos1と多収性のST4を掛け合わせてできたLRC1。それらの系統の茎の強度・収量の比較。(提供:名古屋大学)

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