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物言わぬ石の地磁気で津波史ひもとく

掲載日:2014年5月28日

津波によって打ち上げられた大きな岩の津波石(つなみいし)は津波史のタイムカプセルだった。沖縄県・石垣島に分布するサンゴ礁起源の津波石の残留磁気を解析して、津波石がいつ、どのように形成されたのかを解読するのに、東北大学理学研究科の大学院生の佐藤哲郎(さとう てつろう)さんと中村教博(なかむら のりひろ)准教授らが世界で初めて成功した。海岸に存在する津波石が津波の歴史の解明に役立つ可能性を開く発見として注目される。5月22日の米地質学会誌ジオロジーのオンライン版で発表した。

石垣島には、過去2500年の間に8回の大津波で壊されたサンゴ礁からの津波石が沿岸部に広く散在している。しかし、これらの津波石が何回動いたかといった履歴はよくわかっていなかった。石はサンゴが成長したり、堆積物が形成されたりするときに、細かい磁性粒子を取り込んで、地磁気の方向を残留磁気として記録している。また、津波石の残留磁気は、津波で運ばれてからの年月の経過とともに、新しい残留磁気が地磁気と平行に延びていく。残留磁気の配列からは、石があった位置や移動した年代などがつかめる。

研究グループは、石垣島南部の宮良湾に分布する津波石の残留磁気を詳しく調べて、過去のどの津波で沿岸部に運ばれ、その後の津波でどう動いたかを読み解いた。宮良湾の海岸近くにある35トン級の津波石は1771年の明和津波で運ばれていた。一方、同じ宮良湾の200トン級の大きな津波石は約2000年前の津波で移動していたが、明和津波では動いていなかった。この結果、約2000年前の津波が明和津波よりも巨大だったことが裏付けられた。

2011年3月11日の東日本大震災の巨大津波は、数百年~数千年の津波の歴史を知ることが極めて重要であることを教えた。今回の発見で、大津波で運ばれた津波石の残留磁気が津波の歴史を掘り起こすのに有用であることがわかった。サンゴが津波で破壊されて沿岸に運ばれると、その時点からサンゴの中の放射性炭素が壊変するため、最初に運ばれた年代はこれまでもわかったが、繰り返された津波による複数回の移動までは解析できなかった。

研究グループの中村教博准教授は「サンゴには残留磁気がないというのが常識だったが、幸いにも石垣島のサンゴはかなり強い残留磁気を持っていた。物言わぬ津波石から、一見津波とは関係のない地磁気の情報を引き出して津波の歴史をたどれた。三陸地方に残る一部の津波石でも、同じように残留磁気から津波の時期や規模の分析を進めている。残留磁気が記録されている津波石は、伝承だけでは伝わらない津波の歴史を1000年先の後世の人類に届けることができる」と話している。

地磁気を用いて津波石の移動様式と津波の年代を求める概念図
図. 地磁気を用いて津波石の移動様式と津波の年代を求める概念図

残留磁気から津波の歴史がわかった石垣島の宮良湾の津波石
写真. 残留磁気から津波の歴史がわかった石垣島の宮良湾の津波石。左が200トン級、右が35トン級。
(いずれも提供:東北大学)
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