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傷ついたナノチューブに触媒活性発見

掲載日:2014年5月15日

カーボンナノチューブの構造に欠陥を形成するだけで高い触媒活性がもたらされることを、東京工業大学大学院総合理工学研究科の脇慶子(わき けいこ)准教授らが発見した。ナノチューブに傷をつけて細い穴を形成したのが奏功した。燃料電池や次世代の蓄電池に安価な触媒として将来の応用が期待される。4月14日付の英科学誌『Energy and Environmental Science』オンライン版に発表した。

研究グループは、コバルト酸化物の微粒子を利用し、250℃で酸化して多層カーボンナノチューブの表面に、ナノオーダーの細い穴を形成した。この構造欠陥の傷がナノチューブに新しい触媒活性をもたらし、白金の触媒に近い性能を示した。欠陥構造を導入した後の多層カーボンナノチューブに、金属の不純物はほとんど残っていなかった。ナノチューブの高い触媒活性は不純物ではなく、人工的に形成した構造欠陥の傷によることを確かめた。

燃料電池の触媒には、資源的に希少で高価な白金などが使われている。炭素に金属や窒素を加えて合成するカーボンナノチューブが触媒として研究され、実用化が検討されており、触媒反応には金属や窒素の存在が欠かせないとみられている。今回の発見はこうした定説を覆し、炭素だけの触媒活性をはっきり示した。

多層カーボンナノチューブは1kg当たり1万円程度と安く、白金などの貴金属の100分の1以下で、炭素触媒として高性能化すれば、大幅なコスト削減ができる。耐久性の確認や高性能化が課題だが、この研究は貴金属に変わる触媒としてナノチューブの可能性を開いた。

脇准教授は「窒素や金属を加えて触媒活性を持たせるカーボンナノチューブの表面に、構造欠陥が多いことが、研究のヒントになった。炭素の構造の欠陥こそが触媒活性に重要だといえる。炭素は古い材料でありながら、新しい物性が今も次々に見つかっている。われわれが発見したナノチューブの欠陥が触媒活性を高める仕組みはわかっていないが、構造の傷が電子のやり取りを盛んにして、触媒活性を持つ可能性がある」と話している。

多層カーボンナノチューブに傷をつける欠陥構造形成プロセスの模式図
図1. 多層カーボンナノチューブに傷をつける欠陥構造形成プロセスの模式図

多層カーボンナノチューブの欠陥構造の透過型電子顕微鏡写真とその拡大像
図2. 多層カーボンナノチューブの欠陥構造の透過型電子顕微鏡写真とその拡大像
(いずれも提供:東京工業大学)
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