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新構造の酸化物イオン伝導体を発見

2014.05.08

 新しい結晶構造の酸化物イオン伝導体、ネオジム・バリウム・インジウム酸化物NdBaInO4を東京工業大学理工学研究科物質科学専攻の八島正知(やしま まさとも)教授らが発見した。結晶構造を突き止め、その中の酸化物イオンの拡散経路の可視化にも成功した。東工大の藤井孝太郎助教、茨城大学の石垣徹教授、星川晃範准教授、豪州原子力科学技術機構(ANSTO)のジェームス・ヘスター博士らとの共同研究で、米化学会の学術誌Chemistry of Materialsに速報(Communications)で発表した。

 酸化物イオン伝導体は燃料電池や酸素濃縮器などに使われている。この新材料は酸化物イオン伝導体の応用に新しい扉を開き、燃料電池やセンサー、電子材料などの高性能化を促すと期待される。NdBaInO4の結晶構造解析には 茨城県東海村の大型加速器J-PARC に設置された茨城県の中性子回折装置、豪州ANSTOの中性子回折装置、大型放射光施設SPring-8および高エネルギー加速器研究機構(KEK)放射光科学研究施設PFの放射光X線回折計を用いた。世界のトップクラスの最新結晶解析装置をフルに活用した成果だ。

 八島教授らは、インジウムに配位した酸素原子からなる八面体を含む層状ペロブスカイト型構造をデザインしているうちに、新規物質のNdBaInO4を発見した。BaCO3、In2O3、Nd2O3粉末を混合して、1400℃で焼成して合成した。その結晶を中性子や放射光で詳しく調べて、酸化物イオン伝導体の新しい構造を確かめた。従来の物質とは異なるユニークな構造であることがわかった。また、酸化物イオンがNdBaInO4の結晶構造中を流れていく経路も明らかにした。

 八島正知教授は「酸化物イオン伝導体は固体なのに、イオンが流れる物質で、燃料電池などに幅広い応用があり、工業的に注目されている。エネルギーや環境の問題を解決する切り札ともされている。我々が見つけた新物質は既存の物資と異なる結晶構造で、新しい鉱脈を見つけたことを意味する。この新物質が金脈になるかもしれないと期待している。研究を発展させたい」と意欲を見せている。

図. NdBaInO4の精密化した結晶構造と、酸化物イオンが流れる経路
写真. 直流電気伝導度測定のために白金線をつけたNdBaInO4試料。(いずれも提供:八島正知・東京工業大学教授)

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