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グラフェンで質量ゼロ電子を直接観察

掲載日:2014年4月25日

炭素原子が6角形の2 次元シート状に連なるグラフェンには、質量ゼロの電子が存在する。この特異な電子状態を利用した光学デバイスの開発が世界中で関心を集めている。光照射直後の超高速の質量ゼロ電子を直接観察することに、東京大学物性研究所の松田巌(まつだ いわお)准教授と東北大学電気通信研究所の吹留博一(ふきどめ ひろかず)准教授らが成功した。光通信やレーザー発振などの光学グラフェンデバイスの設計に重要な役割を果たす成果と期待されている。4月21日付の米科学誌アプライド・フィジックス・レターズのオンライン版に発表した。

グラフェン中の電子が質量ゼロになることは既に実証されている。この特異な電子の存在こそが、グラフェン特有の物理現象で、シリコンの限界を超える次世代の光学デバイスの材料として注目される一因である。グラフェンを2004年に発見した欧州の2人の研究者が2010年のノーベル物理学賞を受賞した理由にもなった。しかし、光学デバイスでは光が当たった直後の質量ゼロ電子の挙動が重要なのにもかかわらず、これまで直接に観察されてこなかった。

研究グループは、電子の動きを刻々と追えるフェムト秒時間・角度分解光電子分光法で直接観察に挑戦した。まず、東北大の吹留博一准教授らが炭化ケイ素の基板上に成長させて、きれいな単原子層グラフェンを作り、東京大学物性研究所(千葉県柏市)に持ち込んだ。松田巌准教授らが紫外線より波長の短い真空紫外線レーザーで精密な分光測定をした。この光をグラフェンに照射すると、光誘起で電子が放出される。その電子をリアルタイムで追跡した。その結果、光速の約300分の1の速さで動き回る超高速の質量ゼロ電子観測が実現した。

質量ゼロの電子の振る舞いが、1つの光子に対して複数の伝導電子が発生するグラフェン特有の光応答現象に対応することもわかった。研究グループは「基礎が理解できれば、応用の壁は突破できるように、グラフェンでは基礎と応用が密接に関連している。今後、さまざまなグラフェンを時間・角度分解光電子分光で測定して、質量ゼロ電子系の物理学を詳細に調べ、より高性能な光学デバイス開発への知見を得たい」としている。

(左)がグラフェンへの時間・角度分解光電子分光測定の様子。(右)は光誘起による電子状態変化の追跡データ。
図. (左)がグラフェンへの時間・角度分解光電子分光測定の様子。
(右)は光誘起による電子状態変化の追跡データ。
細線で示す実験データは、太線で示すグラフェンの質量ゼロ電子のモデルとよく一致した。
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