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水域保全にユスリカのDNAバーコード公開

2014.03.31

 淡水域生態域の指標生物とされているユスリカの種を同定しやすくするため、種固有のDNA塩基配列(DNAバーコード)を、国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの高村健二フェローと上野隆平主任研究員、今藤夏子主任研究員らが作成した。3月末から「ユスリカ標本DNAデータベース」として一般公開した。ユスリカから抽出したDNAをこのバーコードに照合すれば、専門家でなくても比較的簡単にユスリカの種を判定でき、「淡水域生態系の評価、保全に役立つ」という。

 ユスリカは平均体長1センチ以下、幼虫で2センチ以下の小さな昆虫で、多様な種が世界中の幅広い淡水域に生息している。日本でも全国に分布し、1500種ほどいるとみられている。幼虫が生息する水質に敏感に応答するため、水域環境を評価する指標生物として古くから研究されてきた。しかし、水中の幼虫は形態の特徴が少ないため、種の判定が難しいのが課題になっていた。

 国立環境研究所のグループは平林公男・信州大学繊維学部教授と河合幸一郎・広島大学生物圏科学研究科教授らと共同で2010年から、主に関東と関西で既存の標本の収集や個体の採集を重ねた。標本の種を形態で判定し、同じ標本からDNAを抽出して、種に特異的な塩基配列を決定した。対象としたのはミトコンドリアのチトクロームCオキシダーゼ1の領域。種名と塩基配列に採集地、採集日、採集者、写真などを加え、43種239件について標本ごとの情報にまとめ、公開した。DNAの同じ領域を分析できれば、種名がわかる。

 高村健二さんは「国内で普通にみられるユスリカ約100種をカバーできるよう、このDNAデータベースをさらに充実させたい。自前のDNA装置がなくても、業者に頼めば、安く分析してくれる。水質管理の研究や応用の現場で活用してほしい。最近は学校でもDNA配列分析技術が使われており、教育現場でも利用できる」と話している。

 ユスリカ標本DNAデータベースは、無償で提供しているが、非営利目的に限り、論文や学会での発表の際は連絡が必要などの利用規約がある。

水質汚染が進んだ湖に特徴的なアカムシユスリカ(左がオス、右がメス)平均体長8.0~9.5ミリ
写真. 水質汚染が進んだ湖に特徴的なアカムシユスリカ(左がオス、右がメス)平均体長8.0〜9.5ミリ
霞ケ浦で11〜3月に見られるアカムシユスリカの幼虫
写真. 霞ケ浦で11〜3月に見られるアカムシユスリカの幼虫。
十分成長した幼虫で体長は2センチ前後
検索結果の例(アカムシユスリカ)
図. 検索結果の例(アカムシユスリカ)

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