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効率100%の青色発光に第3世代有機EL材料で成功

2014.03.03

 電流を流すと発光する有機物の有機EL(エレクトロルミネッセンス)はディスプレイや照明に広く使われている。次世代の高精細ディスプレイなどに有力視される熱活性化遅延蛍光材料(TADF)で効率100%の青色発光有機EL素子の開発に、九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター の安達千波矢(あだち・ちはや)教授らが成功した。内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)と文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の成果で、3月2日の国際科学誌ネイチャーフォトニクスのオンライン版に発表した。

 有機EL素子の青色発光材料はこれまで、蛍光材料(第1世代)とリン光材料(第2世代)がスマートフォンやテレビに利用されてきた。研究グループが取り組む熱活性化遅延蛍光材料はほぼ 100%の効率で光へと変換できることから、第3世代有機 EL として期待されているが、商品化に必要な3原色のうち、青色の発光効率だけは低かった。安達教授らは、熱活性化遅延蛍光の発光で、効率100%の青色EL発光が実現することを実証した。第3世代有機ELはレアメタルを使わずに有機化合物だけからなり、低コストで高効率発光を実現する有機ELの革新的材料になるという。

 研究は3月末に終わるFIRSTプロジェクトのうち「応用に近い成果」と評価され、有機ELのシェアをがらりと変えるほどのインパクトがある技術として注目されている。研究グループは「耐久性の確認が課題だが、企業と協力して、1、2年で材料開発、実用化のめどをつけたい」としている。

有機EL素子の効率100%を示すグラフ(左)とELスペクトラム(右)
図. 有機EL素子の効率100%を示すグラフ(左)とELスペクトラム(右)

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