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世界最高耐熱のバイオプラスチックを開発

2014.02.21

 遺伝子組換えした大腸菌から得られるシナモン類を光化学的手法で加工して、世界最高耐熱性のバイオプラスチックを作るのに、北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科の金子達雄准教授と筑波大学の高谷直樹教授らが成功した。JST課題達成型基礎研究「先端的低炭素化技術開発」の一環で、自動車部品や電装部品などの金属やガラスの代替物質として利用を目指している。

 植物や動物などの生物から作られるバイオプラスチックは、二酸化炭素削減に役立つ次世代の材料として期待されているが、強度や耐熱性などに問題があり、用途は限られている。この限界を超えるため、金子准教授らは、香辛料の成分で、堅い構造を持つシナモン系分子に注目した。まず大腸菌の遺伝子組み換えで、シナモン系分子のアミノ桂皮酸を大量に生産できるようにした。さらに効率的な光反応などで高分子にして、ポリイミドのバイオプラスチックを世界で初めて作製した。

 このバイオプラスチックは透明で、これまで最高耐熱と報告されている芳香族バイオポリエステルの305度を超える390〜425度の耐熱性を備えていた。剛性や難燃性なども確認した。熱によるサイズの変化率も金属並みに低く、金属代替材料になりうる。自動車のエンジンの周囲の部材に使えば、自動車の軽量化の道も開ける。

 原料のアミノ桂皮酸は、石油化学的に生産すれば高価だが、今回の遺伝子工学による製造コストは1キロ当たり2千〜4千円と食品添加物並みになると予想され、実用化の可能性は十分あるという。論文は2月18日、アメリカ化学会誌「Macromolecules」オンライン版で発表された。

 金子准教授は「どんな構造にすれば、有効なバイオプラスチックができるか、分子設計に5年間苦労した。この構造なら、バイオプラスチックの用途は飛躍的に拡大できる。透明性は思いもよらなかった。ガラスの代替材料としても活用できる」と話している。

世界最高耐熱のバイオプラスチック
世界最高耐熱のバイオプラスチック
バイオポリイミドフィルム
本研究での開発のバイオポリイミド
従来の石油由来のポリイミド
従来の石油由来のポリイミド

バイオポリイミドフィルムの写真(左:高い透明性)と従来の石油由来のポリイミド(カプトン)の写真

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