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雄のチンパンジー、母の死別で短命に

2013.11.07

 離乳後の雄のチンパンジーは母親と死別すると、自分も早死にする傾向のあることが、京都大学野生動物研究センターの中村美知夫・准教授らの研究で分かった。ヒトと同様にチンパンジーでも、とくに雄の成長における母親の役割の重要性を示す結果だ。

 父系社会を築くチンパンジーの雄は、生後5歳ごろまでの授乳期を過ぎて母親を亡くしても、その後は生き延びられると考えられていた。研究グループは、アフリカ・タンザイニアの山林にいる野生チンパンジーを観察した2012年まで40年間の記録を基に、孤児となった雄37頭の寿命を調べた。その結果、5歳までの授乳期に母親を亡くした8頭はその後間もなく死に、子供期から青年期に当たる5-15歳までに孤児となった雄29頭のうち19頭が、群れの標準年齢(22-25歳)に達する数年前に死んでいた。

 この結果は、チンパンジーにおける母親の重要性が考えられていた以上に長く継続することを示している。雄のチンパンジーにとっては、母親との関係が成長するに従い疎遠になっていくとはいえ、重要な局面で母親と一緒に食物を食べることができ、他のチンパンジーとのけんかの際に母親からの助けがあるなどの利益がある。母親がいることが、心理的な安心感に繋がっている可能性もあるという。

 中村さんは「ヒトの場合も、母親は授乳が終わった後も長い間、子供のサポートを続ける。こうした特徴が近縁なチンパンジーにも共有されていたことは、ヒトの親子関係がどのように進化してきたのかを明らかにする上でも重要な知見だ」と述べている。

 論文“Orphaned male Chimpanzees die young even after weaning”は『アメリカ形質人類学(American Journal of Physical Anthropology)』に掲載された。

母親のチンパンジーと授乳中の子供
(提供:京都大学野生動物研究センター)
母親のチンパンジーと授乳中の子供
(提供:京都大学野生動物研究センター)

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