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銅の100倍の電流容量、カーボンナノチューブで新材料

2013.07.30

 産業技術総合研究所は、ナノテク素材のカーボンナノチューブ(CNT)と銅を組み合わせて、銅と同程度の電気伝導度をもちながら、銅の100倍まで電流を流せる複合材料を開発したと発表した。密度が小さく、より軽い配線材料としての利用が見込まれ、いろいろな電子部品の小型化・高性能化への貢献が期待される。

 産総研・ナノチューブ応用研究センターの畠賢治首席研究員らは、直径0.4-50 ナノメートル(1ナノは10億分の1)、長さが1-数十マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)のカーボンナノチューブ多数を銅イオンの有機系溶剤に浸し、次に水溶液中で「電気めっき」をすることで、筒状のカーボンナノチューブの内部まで銅が入り込んだCNT銅複合材料を作製することに成功した。

 CNT銅複合材料は、従来の配線材料である銅や金に比べて100倍の電流容量をもち、1平方センチメートル当たり6億アンペアの電流を流せた。常温での電気伝導度は銅と同程度で、温度上昇による電気伝導度の低下は銅に比べて小さく、80 ℃では銅の電気伝導度を上回り、227 ℃では銅の2倍となった。

 電流容量と電気伝導度については従来、金属のような自由電子が多く原子間の結合が弱い物質では電気伝導度が高く、炭素系材料のような原子間の結合が強い材料では電流容量が大きいという関係がある。今回開発のCNT銅複合材料では、銅をチューブ内に十分充填することで高い電気伝導度を保ち、銅粒子をCNTで覆うことで大きな電流容量も同時に達成できたという。

 また、CNT銅複合材料は体積にして45%のCNTを含み、密度は1立方センチメートル当たり5.2グラムと、銅の8.9グラム、金の19グラムに比べて小さい。このことから、電子デバイスなどに応用される際の軽量化も期待できるという。

 今回の研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「低炭素化社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」によって行われた。研究論文“One hundred fold increase in current carrying capacity in a carbon nanotube?copper composite”は英国の学術誌『Nature Communications』に23日掲載された。

開発したCNT銅複合材料(左)
(提供:産業技術総合研究所)
開発したCNT銅複合材料(左)
(提供:産業技術総合研究所)

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