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懸念広がるアルゼンチンアリ

掲載日:2013年7月22日

南米原産の「アルゼンチンアリ」が20年前に広島県内で生息が確認されて以来、定着域がこれまでに愛知県や神奈川県、東京都などに広がっていることが、国立環境研究所の調べで分かった。南米からの輸入木材やコンテナなどと一緒に日本に運ばれたものとみられる。アルゼンチンアリの定着地では日本在来のアリの種数が減っており、生物種の構成バランスの変化や地域の生態系への悪影響も心配されることから、同研究所はアルゼンチンアリの情報提供を求めている。

アルゼンチンアリは南米ブラジル南部からウルグアイ、パラグアイ、アルゼンチン北部にかけてのパラナ川流域に生息する小型のアリで、体長は働きアリで2.2-2.6㎜、体の色は茶褐色。攻撃性が非常に高い。この150年間の世界的な交易に伴って分布を広げ、現在は北米やヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアの他、ハワイ諸島やイースター島などの海洋島にも侵入、定着し、世界的害虫として問題となっている。このため、国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されている。

日本国内では1993年に初めて広島県廿日市市で定着が確認されて以来、これまでに兵庫県や山口県、愛知県、神奈川県、岐阜県、大阪府、京都府、静岡県、徳島県、東京都、岡山県の12都府県で確認されている。広島県や山口県での生息状況の調査によると、アルゼンチンアリの定着地の多くは沿岸部の市街地であるが、田園を主体とする丘陵地でも定着が確認され、非連続的な飛び地状の分布域を形成している。アルゼンチンアリは飛翔分散を行う習性がないため、自力による分散ではなく、物資の移動に伴って各地域へ分散したものと考えられている。

環境省は2005年に、アルゼンチンアリを外来生物法に基づく「特定外来生物」に指定し、各地域での防除事業にも乗り出している。2011年4月からは国立環境研究所やフマキラー(株)が共同し、アルゼンチンアリを根絶するための防除手法の開発試験を東京都大田区の大井埠頭(ふとう)と城南島で行い、99%以上の防除効率を示す成果を得た。

このアルゼンチンアリによって、日本在来のアリ類が廿日市市、広島市、神戸市、山口県岩国市、大阪市などでは地域外に追いやられたことが報告されている。また、日本在来のアリに花粉の運搬や種子の散布を依存している植物が繁殖阻害を起こす可能性や、生物種の構成のバランスが変化し、地域の生態系に悪影響を及ぼすおそれがある。さらに、海外では、アリ以外の節足動物への影響や鳥の巣づくりが阻害されるなど、さまざまな生態系への影響も出ているという。

日本での影響拡大も懸念されるため、環境省は、東京都大田区の防除事例や最新の情報をまとめ、ホームページで公開している『アルゼンチンアリ防除の手引き』を改訂した。さらに国立環境研究所は、アルゼンチンアリの分布情報の収集にも乗り出し、目撃した場合には、2-3個体のアリを捕獲し、白い紙に貼りつけて、採取場所と連絡先を明記して郵送してほしいと協力を呼びかけている。

アルゼンチンアリと在来アリ類との見分け方
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アルゼンチンアリと在来アリ類との見分け方
(提供:環境省)
アルゼンチンアリの定着地(数字は初めて確認された年)
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アルゼンチンアリの定着地(数字は初めて確認された年)
(提供:環境省)
世界におけるアルゼンチンアリの侵入地域と在来の分布地域
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世界におけるアルゼンチンアリの侵入地域と在来の分布地域
(提供:環境省)
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