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タンパク質のエンドレス合成

2013.05.23

 大腸菌の細胞内でDNA(デオキシリボ核酸)の遺伝情報をコピーする直鎖状のmRNA(メッセンジャーRNA〈リボ核酸〉)を環状のmRNAに作り変えることで、タンパク質を終わりなく合成することが可能となる手法を、理化学研究所と北海道大学薬学部の研究グループが開発した。この手法によれば、長鎖状のタンパク質であるコラーゲンやシルク、クモの糸などを効率よく作れるようになるという。

 生物の体を構成するタンパク質は、細胞核内にあるDNAの遺伝情報をもとに合成される。その過程は、まずDNAの遺伝情報がmRNAに転写され、次に核外で「リボソーム」という“製造マシーン”がmRNA上を移動しながら転写情報を読み取り、その情報に従ってアミノ酸を合成して複数つなげることで1つのペプチド、さらにはタンパク質が完成する。この作業を終えたリボソームは、また次の(あるいは同じ)mRNAの先頭に結合して再び合成を始める。この仕事を終えたリボソームが再び合成作業を開始するまでが、タンパク質合成で最も時間のかかる過程だという。

 そこで研究グループは、この最も時間のかかる過程に注目した。通常が直鎖状となっているmRNAの終点標識を取り除き、末端を先頭につなげることで環状のmRNAを作った。アミノ酸8個からなる「FLAGタンパク質」を作る遺伝情報を1単位に、いろいろな長さのmRNAで直鎖状のものと比べた。その結果、直鎖状mRNAではそれぞれの長さに応じて少量のペプチド断片ができたが、環状mRNAでは長鎖で大量のペプチドが観測され、FLAGタンパク質が連続的に合成された。さらに環状mRNAでは、単位時間当たり200倍ほどの高効率でタンパク質合成が進むことを確認したという。

 研究論文“Rolling circle amplification in a prokaryotic translation system using small circular RNA”は近く、ドイツの化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」(オンライン版)に掲載される。

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