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脳内の視覚活動をリアルタイムで可視化

2013.02.05

ゾウリムシ(右の太矢印)を見ることで、ゼブラフィッシュ稚魚の「中脳視蓋」に起きた神経シグナル(細矢印)(提供:国立遺伝学研究所)
ゾウリムシ(右の太矢印)を見ることで、ゼブラフィッシュ稚魚の「中脳視蓋」に起きた神経シグナル(細矢印)(提供:国立遺伝学研究所)

 熱帯魚ゼブラフィッシュの稚魚が、周囲を動き回るゾウリムシを目で追う時の脳活動の様子をリアルタイムで観察することに、国立遺伝学研究所の武藤彩(あきら)助教、川上浩一教授や埼玉大学脳科学融合研究センターの中井淳一教授らが成功した。

 神経活動の検出のために、中井教授は、神経細胞の電気活動に伴う細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を間接的に測定するカルシウムセンサー「GCaMP」(ジーキャンプ)を、緑色蛍光タンパク質(GFP)を基にして作った。GCaMP にカルシウムが結合すると、蛍光強度が増加する。今回、研究チームはカルシウムの検出感度を改善した「改良型GCaMP」を開発し、ゼブラフィッシュの視覚中枢である「中脳視蓋(がい)」の神経活動を観察した。

 えさとなるゾウリムシが周囲を泳ぐと、それを目で追いかけたゼブラフィッシュの眼球網膜の神経細胞が興奮し、さらに脳内に伝達されて、中脳視蓋の神経細胞を興奮させる。実験では、ゾウリムシを目でとらえた時の神経シグナルを観察し、視界中のゾウリムシの軌跡が、脳表面の「視覚地図」(Visuotopic map)上の神経活動の軌跡として「投影」される様子もリアルタイムで可視化された。

 ヒトや魚などの視覚をもつ動物はすべて、視野全体に対応する神経細胞が脳の表面に並んだ共通構造をもち、これは「視覚地図」と呼ばれる。目で見た外の世界は「視覚地図」へと投影されるが、この様子を自然な条件下でリアルタイムに観察した例はこれまでなかったという。

 研究論文は、米国科学誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」(オンライン版、1日)に掲載された。実験の様子を観察した動画は、今月28 日まで、見ることができる。

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