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太陽フレアの予測が可能に

2012.11.07

 地球規模での大停電や電波障害などの影響を及ぼす太陽表面の爆発現象「太陽フレア」は、前兆として2種類の特殊な磁場構造が出現し、その数時間後に発生することが分かった。名古屋大学太陽地球環境研究所の草野完也教授を中心とする東京大学、京都大学の研究チームが、スーパーコンピュータを使った数値実験や人工衛星の観測データの解析によって発生のメカニズムをつかんだもので、フレア発生の予測など、正確な宇宙天気予報の実現にも貢献が期待される。

 太陽フレアの発生は、黒点の周辺に蓄積された磁場エネルギーの一部が、太陽コロナのプラズマエネルギーとして突発的に解放される現象として考えられているが、詳しいメカニズムは解明されていない。そのため、太陽フレアが「いつ」「どこで」「どれ程の規模」で発生するかを、正確に予測することはこれまで困難だった。

 研究チームは、太陽表面における「大規模な磁場のねじれ」と「小規模な磁場の変化」の相互作用を通して太陽フレアが発生するとの仮説を立て、海洋研究開発機構(JAMSTEC)にあるスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を使って、100通り以上の異なる磁場構造についての太陽フレア発生の有無を調べた。その結果、ねじれた磁場の中に「反極性型」と「逆シア型」の2種類の特殊構造を持つ小規模な磁場が存在したときに、太陽フレアが発生することが分かった。さらに発生する太陽フレアの規模は、大規模な磁場のねじれが強いほど大きくなることも明らかとなった。

 この検証のために、太陽観測衛星「ひので」が観測した2006年12月13日と11年2月13日に発生した太陽フレアのデータを解析したところ、地球シミュレータで予測した2種類の磁場構造が太陽表面に現れた数時間後に、それぞれの領域で太陽フレアが発生したことを確認した。また過去に観測された複数の太陽フレアも、予測に一致する磁場構造を伴っていた。

 今回の研究は、太陽フレアの発生条件となる磁場構造を世界で初めて特定したもので、太陽磁場の観測を通してフレアの発生を数時間前に予測することも可能になるという。

 太陽フレアは、巨大なものになると水爆100万個分のエネルギーを一度に放出し、強力なエックス線や粒子線、巨大な衝撃波などを生成する。その影響は地球上の電力網や通信、放送などの機器系統の故障ほか、人工衛星の機能障害、宇宙飛行士や航空機の乗員乗客らの健康被害にも及ぶことが指摘されている。実際1989年には巨大な太陽フレアによる磁気嵐で、カナダ・ケベック州で大停電が発生し、600万人が被害を受けたという。

 今回の研究は、科学研究費補助金基盤研究「太陽フレア・トリガ機構の解明とその発生予測」の支援を得て行われた。研究成果は米国天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」(11月20日号)に掲載される。

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