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日本発2種類目の光格子時計が世界標準候補に

掲載日:2012年11月5日

産業技術総合研究所は、時間の基本単位である1秒の長さを決める世界標準時計の候補に、同研究所計測標準研究部門時間周波数科の洪鋒雷・研究科長、安田正美主任研究員らが開発した「イッテルビウム光格子時計」が選ばれた、と発表した。フランスで開かれた国際度量衡委員会の「メートル条約関連会議」で採択されたもので、日本提案の標準時計候補は2種類目、世界では8種類目となる。

世界標準時計として現在は「セシウム原子時計」が、1967年の国際度量衡総会で決定されて以来、使われている。これはセシウム原子の振動数(1秒間に91億9,263万1,770回)を基にしたものだが、現実的には約3,000万年に1秒の誤差が出る。このため、セシウム原子時計の性能を上回る、新しい“秒の定義”の候補(「秒の二次表現」)が求められてきた。

この次世代原子時計の有力候補として期待され、世界の計量標準研究機関で開発が行われているのが、東京大学大学院の香取秀俊教授が2001年に提案した「光格子時計」だ。これは、特定の波長(「魔法波長」)を持つ複数のレーザー光を重ね合わせることによって真空中に浮いた幾つもの光格子(ひかりこうし)に原子を一個ずつ閉じ込め、そこに別のレーザー光を当てて原子の放射する光の振動数を測定する。この方法では約100万個の原子を1回で光格子に捕捉できるので、セシウム原子時計の精度15桁を1,000倍の18桁まで向上させることができ、宇宙誕生から現在までの137億年間動かし続けても0.4秒の誤差しかない時計が実現できるという。

香取教授らはストロンチウム原子を用いた「ストロンチウム光格子時計」を世界に先駆けて開発し、2006年のメートル条約関連会議で「秒の二次表現」として採択された。産総研は、温度影響がより少なく、性能の高いイッテルビウム原子を用いた光格子時計を09年に開発したが60万年に1秒の誤差があり、「秒の二次表現」の基準(300万年に1秒以下)に達していなかった。洪研究科長らは今回、レーザー光源の周波数制御によってイッテルビウム原子による“雑音信号”を減少させるなどして時計の測定精度を大幅に改良し、誤差も「900万年に1秒」に抑えて基準を満たした。標準時計候補には、他に、イオンを用いた原子時計などが採択されている。

国際度量衡委員会で“秒の再定義”が行われ、次の世界標準時計が決まるのは今後、数年から10年先とみられる。洪研究科長らは「さらに精度と信頼性を向上させ、完成度を高めていく」という。

光格子時計は、地上でわずか1センチメートル高く置くだけで、重力によって時間の進み方が速くなることが観測される。究極の光格子時計が実現すると、重力による空間のひずみが、時間の進み方の違いとしてリアルタイムで読み出せるようになり、地下資源の探索や、刻々変化する地殻変動などの検知にも役立つことが期待されている。

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