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「環境危機時計」が22分進む

2012.09.12

 公益財団法人旭硝子財団が世界の環境有識者アンケートを基に作っている、地球環境の悪化に伴う人類存続の危機感を表す「環境危機時計」の時刻が今年は「9時23分」を示し、これまで3年連続で改善していた危機感が昨年よりも22分進み、悪化に転じたことが分かった。

 「環境危機時計」は、同財団が1992年から毎年公表している。基となる「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」は、世界各国の政府・自治体、非政府組織、大学や研究機関、企業、マスメディアなどの環境問題に関わる有識者(合計約7,000人)に対して、毎年4月に調査票を送付し、6月までに回答を得ている。今年は日本を含む167カ国に送付し、88カ国1,101人から回答を得た。

 「危機時刻」は、0時1分から3時0分までが「ほとんど不安がない」、3時1分から6時0分までが「少し不安」、6時1分から9時0分までが「かなり不安」、9時1分から12時0分までが「極めて不安」を表し、12時に近づくほど深刻であることを意味する。全回答者の平均危機時刻は1992年には7時49分だったが、2000年は8時56分、05年は9時5分、08年は9時33分と悪化傾向にあったが、09年は9時22分、10年は9時19分、11年は9時1分と徐々に改善していた。

 今年の調査結果で、昨年と比べて危機時計の針が20分以上進んだのは、アフリカ(9:09→10:00)、中南米(9:18→10:00)、日本(8:46→9:14)、西欧(9:28→9:55)の4地域・国で、途上地域の進み幅が先進地域より大きかった。逆に時刻が戻ったのは、中東(10:24→9:38)、東欧・旧ソ連(9:13→9:12)の2地域だった。

 危機時刻を決めるのに念頭に置いた項目は、「気候変動」が最多で、次に「水資源」「環境汚染」「生物多様性」「人口」が続いた。危機時刻が進んだ項目は、「環境と経済」「生物多様性」「人口」「環境と社会」「気候変動」の順だった。地球環境問題を解決する上での障害は「経済利益の追求」「グローバル経済システム」とする回答が多数だった。

 また今回は、東京電力福島第一原発の事故を受けて、原子力発電についても調査した。事故以降の市民意識として、「反対する市民が多くなった」と回答したのは全体で67%(日本では97%)。回答者の自国の原子力政策について、「見直すべき」(32%)、「原発依存度を減らすべき」(25%)、「原発を廃絶すべき」(23%)との回答が上位3位で、全体の80%を占めた。原子力政策を見直す場合に最も重視する点として、「市民の健康・安全」(39%)、「次世代への配慮」(23%)、「地球環境への配慮」(20%)が全体の82%を占めた。

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