ニュース

日本の学生の課題解決意欲減退?

2012.01.05

 10年前に比べ、日本の学生は課題に取り組む意欲が低下している可能性を伺わせる研究結果が、京都大学の研究者たちによって得られた。

 内田由紀子・京都大学 こころの未来研究センター 准教授、ビナイ・ノラサクンキット・米ミネソタ州立大学 准教授は、大学生をニート・引きこもりになるリスクが高いグループ(全体の1割)と残り9割の低リスクグループに分けて、想像力テストと呼ばれる実験を行った。実験の中身は、ある課題に対して成績が良かった学生と悪かった学生とで、同様の課題に引き続き取り組もうとする姿勢にどのような差が出るかを見る。

 こうしたテストは10年前、外国人研究者が北米と日本の学生に対して行った先行研究がある。この時は北米の学生は好成績だったと伝えられると、同様の課題に対して自発的に継続して取り組むのに対し、日本の学生は逆に失敗した時に「もっと頑張らなければ」と同様課題に自発的かつ継続して取り組むという違いが見られた。

 日本人の学生だけを対象にした今回の結果では、ニート・引きこもりになるリスクが低いグループの学生は10年前と同様の傾向を示した。しかし、高リスクグループは、失敗すると同じ課題を継続してやろうとせず、「失敗の後に努力することをやめ、あきらめてしまう傾向」が見られた。

 こうした傾向を知るためにとられた方法は、テストの結果を伝えた後、実験担当者が「実験に必要な資料を取りに行く」と退室し、学生が1人になった時、どれだけ自発的に同じ想像力テストに取り組むかを見る。高リスク、低リスクグループで明らかな差が出たことは研究グループの想定内ではあった。しかし、10年前に比べ、今回の学生たちは全体として自発的にテストに取り組む時間が減っているという予想外の結果も得られた。研究者たちは「この差は統計的に意味のあるもので、今の学生は成功した場合、失敗した場合いずれにおいても、一生懸命課題に取り組むという傾向が減退していることが分かった」と言っている。

 ただし、「実験担当者を待っている間に課題をやって時間をつぶすぐらいなら携帯でメールをチェックしよう、ということが起こったとも考えられる」とも付け加えている。

関連記事

ページトップへ