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南海トラフで時間差連動型巨大地震の警戒も 中央防災会議提言

2011.09.29

 中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」は28日、これまで対策から除外していた最大クラスの津波も想定し、さらに避難行動も重視するなど新たな地震・津波対策のあり方についてまとめた報告 を公表した。

 報告は、どこでも地震が発生するという考え方に立って地震・津波への備えを万全にすべきだとし、特に近い将来、発生が心配されている南海トラフ沿いの海溝型巨大地震対策は、被災地のみの対応ではなく、日本海側の道路、鉄道、港湾の整備なども含めた国土全体のグランドデザインの観点から検討が必要だ、としている。

 東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)が地震学者をはじめとする多くの人たちに与えた最大の衝撃は、これまでごく一部の研究者以外、全く無警戒だった連動型巨大地震だったことだ。繰り返し起こることが分かっていた三陸沖だけでなく、巨大地震は起こらないと思われていた福島から茨城沖にかけての日本海溝沿いの海域までもが一挙にずれ動いた。

 南海トラフについて政府の地震調査研究推進本部は、東海地震、東南海地震、南海地震がそれぞれ別個に起きるという前提で発生の確率を試算、公表している。東日本大震災を機に、一部の研究者が警鐘を鳴らしていた東海地震、東南海地震、南海地震が一度に起きる連動型巨大地震に対する関心が急に高まったが、報告は、最悪の結果をもたらすのは東海地震、東南海地震、南海地震が同時発生した場合とは限らず、むしろ時間差をおいて発生する場合の被害の大きさとその備えの重要性を指摘しているのが目を引く。

 「例えば、数分から数時間の時間差の場合には、津波の重なりにより津波高が大きくなり、さらに次の地震発生までの時間がそれよりも長くなる場合には、復旧・復興途上の施設に被害を与えたり、社会的な不安を増大させる恐れがある」と報告は、指摘している。

 また、南海トラフで巨大地震が起きた場合の人的・経済的被害が甚大になる恐れについてはさらに、「例えば東京湾における石油貯蔵タンクの火災、液状化現象、長周期地震動による超高層ビルなどの被害が発生する可能性がある」、と東海地震、東南海地震、南海地震の震源域から離れた地域の対策にも十分、留意する必要を指摘した。

 一方、南海トラフの巨大地震とともに従来から最も警戒されている首都直下地震については、しばらく起きないだろうとしてこれまで考慮外となっていた相模トラフ沿い(相模灘を震源域とする)の関東大地震(1923年、マグニチュード7.9)級の地震も想定して対策を再検討する必要も提言している。

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