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「スター研究者」数で米、英、ドイツに見劣り

2011.09.12

 日本は研究論文が引用される率が大きい「スター研究者」の数が米、英、ドイツに比べ見劣りすることが、加藤 真紀・科学技術政策研究所上席研究官の分析で明らかになった。

 加藤氏は、国際文献情報会社「トムソン・ロイターサイエンティフィック」のデータベースに収められている論文の被引用数を基に、21分野別に論文の披引用率が上位250人に入る研究者を「スター研究者」とみなして、それらの研究者の所属機関や学位取得機関などを比較した。

 「スター研究者」は、全世界で約6,300人、全研究者の0.5%いる。国別で見ると米国が飛び抜けて多く、続いて英国、ドイツ、日本の順になっている。ただし、今回の分析の対象とするのに必要な情報が得られた数で言うと、ドイツと日本の順位が逆転している。

 分析の結果、日本のスター研究者の数は、128人で、4カ国の国別人口100万人当たりの数で見ると米国13.1人、英国7.8人、ドイツ3.2人に対し、日本は2.1人。トップの米国に比べると6分の1以下など、人口当たりのスター研究者数の少なさが明らかになった。また、経済協力開発機構(OECD)の統計を基にフルタイム換算された研究者1万人あたりのスター研究者数で比較しても、米国29.2人、英国19.2人、ドイツ8.7人に対し、日本は3.9人と見劣りする。

 3カ国より劣る理由について加藤氏は、米国や英国が世界中から国際級研究者も含めた多くの研究者を引き付けるなど、研究者の流動性が高いことや、フルタイム換算された研究者数が日本は他の3カ国よりも多いことによる影響を指摘している。

 このほか、日本のスター研究者については、免疫学、材料科学、農業科学の3分野が多く、女性研究者が少ない。さらに博士号の取得先が大規模国立大学に集中している、という特徴があることもはっきりした。

 日本のスター研究者128人の所属機関は、京都大学の20人を筆頭に、東京大学16人、大阪大学7人、東京工業大学6人、北海道大学5人、理化学研究所5人、東北大学4人、九州大学4人など国公立大学と公的研究機関が85.2%を占めている。

 日本人研究者の世界における位置づけについては、今回のような評価に対し、北澤宏一・科学技術振興機構理事長にように突出した研究成果を重視する見方もある。北澤氏は、山中伸弥・京都大学教授の「ヒトiPS細胞」、細野秀雄・東京工業大学教授の「鉄系高温超電導体」、審良静男・大阪大学教授の「自然免疫」の研究成果などを挙げ、世界中にインパクトを与えた研究成果がこれだけ相次いだことは過去にない、と主張している。

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