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自立遅い日本の若者 文部科学白書が指摘

2011.08.24

 日本の若者は社会的・職業的自立に向けて必要な能力や態度が十分に身に付いていない、と23日公表された2010年度文部科学白書が指摘した。

 ことしの白書は、「教育と職業」という特集を組み、若者の失業率や非正規雇用率の高さ、新卒者の就職内定率の低さ、若年無業者や早期離職者の存在など「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていない現状について多数のページを割いている。

 この中で、若者が十分身につけていないこととして「働くことへの関心・意欲・態度、目的意識、責任感、意志などの未熟さ」「コミュニケーション能力、対人関係能力、基本的マナーなど、職業人としての基本的な能力の低下」「職業意識・職業観の未熟さ」が挙げている。

 その背景に、高等学校の普通科や大学に進学すること自体を評価する社会的風潮が根強い中で、進路意識や目的意識が希薄なまま進学する者が増加している実態を指摘している。さらに、職業選択に関する学生のニーズに対応した教育が十分に提供されていないという大学生を対象とした調査結果(全国大学生調査コンソーシアム、東京大学大学経営・政策研究センター「全国大学生調査(2007年)」)などを示し、「社会全体を通じて、職業に関する教育に対する認識が不足していることが指摘されている。その結果、安易に進路選択をするなど職業へ移行する準備が十分に行われてなく、新卒者の早期離職や若年無業者の存在などの問題に影響を与えていると考えられる」としている。

 こうした現実は、2007年に公表された経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査(PISA)からも伺える。この調査は、15歳を対象に実施されたものだが、同年暮れに来日したグリアOECD事務総長は「日本の15歳生徒は、自分の将来という観点から科学を学ぼうとする動機づけが弱い。30歳の時点で自分が科学に関係する仕事に就いていると予測する日本の生徒はわずか8%(OECD平均は25%)で、これはOECD諸国の中で最も少ない割合だ。さらに、PISAのテストでは成績が良かったにもかかわらず、自らの科学的能力に対する自信は、OECD加盟国の中で一番低かった」と指摘している。

 一方、若者の意識について若者の責任を問う風潮に批判的な黒川清・政策研究大学院大学 教授、元日本学術会議 会長のような意見もある。氏は講演などで、国際的な視野を持つことなしにやってきた親たちの世代の責任がむしろ大きい、と強調している。

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