ニュース

生きた細胞の内部構造顕微鏡で観察に成功

2011.08.18

 生きた細胞の内部構造を顕微鏡で観察することに日本原子力研究開発機構と奈良女子大学の研究者たちが成功した。

 生きた生物を観察するのに用いられている光学顕微鏡は、可視光の波長という制約から数百ナノメートル(1ナノは10億分の1)より微細な構造が観測できない。また、光学顕微鏡よりさらに小さいものが観察できる電子顕微鏡も、物質の透過性が小さい電子の性質から、細胞全体をそのまま観察することは難しかった。日本原子力研究開発機構 原子力機構量子ビーム応用研究部門 照射細胞解析研究グループの加道雅孝サブリーダー、岸本牧研究副主幹、篠原邦夫研究嘱託と奈良女子大学の保智己准教授、安田恵子講師らは、可視光よりはるかに波長が短く、かつ細胞に含まれる多量の水にも吸収されにくい軟エックス線を用いた顕微鏡の開発に挑んだ。

 これまで誰も成功していなかったのは、細胞の動きが静止して見える短い時間で、瞬時に撮像する技術が困難だったことが理由。加道サブリーダーらは、高強度レーザーを金属薄膜に集光して軟エックス線を発生させる技術と、細胞をエックス線感光材上に直接培養する手法を開発することで、壁を乗り越えた。この結果、生きた細胞の内部構造を90ナノメートルという高解像度で観察することが可能になった。

 細胞内のミトコンドリアや細胞骨格などをはっきりと捉えることができ、この観察手法は今後、生命現象を細胞レベルで理解する研究に大きな力を発揮すると期待されている。

関連記事

ページトップへ