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iPS細胞から作成の精子でマウス誕生

2011.08.05

 マウスのiPS細胞から精子をつくり、その精子を顕微受精することで正常な子を産ませることに京都大学大学院医学研究科の斎藤通紀教授と林克彦講師らの研究グループが成功した。生殖細胞がどのようにして形成されるかなど基礎研究分野だけでなく、不妊症の原因究明など応用面でも役立つ研究成果として関心を集めている。

 斎藤教授らはiPS細胞からまず精子や卵子の前段階である「始原生殖細胞」をつくった。これを生殖細胞を持たないマウスの精巣に移植した結果、10週間後に精子がつくられているのが確認できた。これらの精子から顕微受精によって受精卵をつくり、仮親であるメスのマウスに移植した結果、子どもが生まれた。これらの子たちは成長して生殖能力を持つことが確かめられている。斎藤教授らは、iPS細胞だけでなく、胚性幹細胞(ES細胞)でも同様な結果を得た。

 斎藤教授は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)で、2009から生殖細胞の初期発生過程を解明する研究を主導している。この研究をさらに発展させた研究プロジェクトが2011年度の戦略的創造研究推進事業・ERATO型研究の新しい研究領域「全能性エピゲノム」として採択された。その研究総括として、引き続き生殖細胞の発生機構や病気の発症機構などを解明する研究を進める。

 ES細胞やiPS細胞を用いて生殖細胞をつくる研究は倫理的な問題があることから文部科学省を中心に慎重な検討が行われた経緯がある。現在は、ヒトの体内で進行する精子、卵子の成熟・分化機構の検討が可能になり、生殖細胞に起因した不妊症や先天性の疾患・症候群について、原因の解明や、新たな診断・治療方法の確立につながることが期待される、として定められた条件の下で研究が認められている。

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