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イレッサ和解勧告厳しく批判 国立がん研究センター理事長

2011.01.25

 肺がん治療薬「イレッサ」で副作用被害を受けたとする患者・遺族が起こした損害賠償請求訴訟で、同薬の輸入・販売元であるアストラゼネカ社が24日、東京・大阪両地裁の和解勧告を拒否した、と各メディアが一斉に報じた。

 一方、国立がん研究センターの嘉山孝正理事長は24日、「医療における不可避の副作用を認めなくなれば、すべての医療は困難になり、このような治療薬で効果がある患者も医療の恩恵が受けられなくなり、医療崩壊になると危惧する」と和解勧告した裁判所の判断を厳しく批判する声明を発表した。

 嘉山理事長は、イレッサによる副作用被害について「これまでの非加熱製剤によるHIV(エイズウィルス)訴訟やB 型肝炎訴訟などの明らかな人為的過誤による薬害被害とは全く異なる」とし、急性肺障害・間質性肺炎という副作用があることを添付文書に記載するよう指導するなどしてきた厚生労働省の対応を「医療現場から見てもイレッサの安全性の確保に十分注意してきたと考える」と評価している。

 また「イレッサが世界に先駆けて日本で承認されたことによって日本人の多くの患者がその恩恵を受け、その効果を世界に発信し重大な副作用の情報についても最初に世界に伝えたことは、日本人のみならず世界中でがんと闘う患者のためにも大きく貢献した」とプラス面を指摘している。

 さらに「人間を対象とする医学には、どんな努力をしても、絶対安全は残念ながらない」として「重大な健康被害の救済制度を創設すべきで、個別の問題に限局せず、国民的議論、国会での十分な議論が必要だ」と提言した。

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