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“死の谷”克服で文科、経産両省が協調支援

2010.09.01

 大学、公的機関の基礎研究成果をイノベーション創出に結びつけるため、文部科学省と経済産業省が協力して支援することになった。実施者となる科学技術振興機構の北澤宏一理事長と産業革新機構の能見公一社長が8月31日、中川正春・副文部科学相、近藤洋介・経産政務官立ち会いの下で協力協定書に署名した。

 協定によると、科学技術振興機構が大学や公的研究機関とのネットワークを活用して収集、整理した特許と、産業革新機構が投資あるいは運営する知財ファンドを連携させ、知的財産の活用を図る。

 大学や公的研究機関の数多い研究成果と、この中から産業に発展した限られた成功例との間には、両者を隔てる“死の谷“と呼ばれる深い溝が存在することが指摘されている。この“死の谷”克服は、文部科学、経済産業両省と両省傘下の研究開発機関の大きな課題となっている。

 科学技術振興機構によると大学の特許取得数は2000年ごろから急増しており、大学と企業との共同研究も増えている。しかし、逆に日本企業の研究開発投資意欲は冷え込んでおり、むしろ韓国をはじめとする新興国の方が、日本の基礎研究成果や特許に関心が深く、実用化にも熱心という。

 産業革新機構は「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」により政府出資820億円、民間(19社2個人)出資100億1,000万円で昨年7月設立された株式会社。従来の業種や企業の枠にとらわれず次世代の国富を担う産業を創出することを目的に、「中長期の産業資本」を提供したり、取締役派遣などを通じた経営参加型支援を実践している。小規模案件から大規模案件(数百億円単位)に対応可能な投資能力を持つ。

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