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神経幹細胞移植で脊髄損傷マウス歩行可能に

2010.08.19

 重い脊髄(せきずい)損傷のため歩けないマウスに神経幹細胞を移植し歩行可能にする新しい治療方法を、奈良先端科学技術大学院大学のあべ松昌彦研究員と中島欽一教授らが発見した。

 神経幹細胞を用いる試みはこれまでにもあるが、抗てんかん薬であるバルプロ酸を投与するところが新しい点。中島教授はバルプロ酸が遺伝子構造を変え、高い効率で神経幹細胞を神経細胞へ変化させることを6年前に発見している。

 重度の脊髄損傷モデルマウスに神経幹細胞を移植しバルプロ酸を投与したところ、7割のマウスが歩けるまでに回復した。バルプロ酸を投与する前には移植した神経幹細胞からできた神経細胞は1%以下しかなかったのが、投与後に約20%に増えていることが分かった。特殊な色素を用いて調べたところ、神経幹細胞からできた神経細胞がリレーするように損傷した脊髄の神経回路をつないでいることも分かった。

 壊れた脊髄の神経回路を直接再建する治療法はこれまで全くない。脊髄損傷だけでなく脳卒中などの中枢神経疾患に対する再生治療技術への応用を研究チームは期待している。

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