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イネの収量5割増やす遺伝子発見

2010.05.25

 イネの収量を一挙に5割高める可能性のある遺伝子を名古屋大学の研究者たちが発見した。遺伝子組み換えをしないでも交配によって取り込むことができ、近い将来、世界の食糧危機回避の担い手になり得るのでは、と期待されている。

 名古屋大学生物機能開発利用研究センターの芦苅基行教授らが発見した遺伝子は、12本あるイネの染色体の第8染色体にあった。1次枝梗(穂軸から最初に枝分かれした幼穂)の数を制御する役割を果たしている。同大学に保存されている「ST-12」という系統(1次枝梗の数が一般的なイネ品種に比べ3倍多い)と、一般的なイネの品種である「日本晴」を交配して得られたイネの遺伝子を調べた結果、見つかった。

 WEPと名付けられたこの遺伝子はどのイネも持っている。しかし、ST-12では幼穂を形成する段階でWEP遺伝子の発現量が「日本晴」に比べて10倍近く上昇し、1次枝梗の形成を促進していることが確かめられた。

 芦苅教授らは2005年に穂に付くイネの粒数(着粒数)を増やす遺伝子も見つけている。このGn1遺伝子と今回発見されたWER遺伝子を「日本晴」に導入したところ一つの穂あたりの1次枝梗の数が2倍強に増え、1株あたりの着粒数も51%増えることが分かった。

 世界の人々が摂取するカロリーの50%は、イネ、コムギ、トウモロコシから得られている。牛、豚、鶏といった肉類は、肉として得られる量のそれぞれ11倍、7倍、4倍もの穀類を餌として与える必要があるため、食糧危機回避には、イネ、コムギ、トウモロコシの増産が大きな役割を果たす。イネはこれらの穀類のうちでも最大のカロリー提供源(全食物の23%)となっている。

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