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生物多様性条約締約国会議への日本提案公表

2010.01.08

 10月に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で検討される「ポスト2010年目標の設定」に関する日本の提案がまとまり、7日環境省が公表した。提案は6日、モントリオールの同条約事務局に提出済み。条約事務局は日本提案を含む各国・各関係機関からの提案を参考に2月中旬までに「ポスト2010年目標を含む条約戦略計画」の事務局案をまとめ、各国に示す。

 日本の提案は、2050年までの中長期目標として「人と自然の共生を世界中で広く実現させ、生物多様性の状態を現状以上に豊かなものとするとともに、人類が享受する生態系サービスの恩恵を持続的に拡大させていく」ことを挙げている。「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という現行の目標に比べ、はるかに前向きの内容となっている。

 また、生物多様性の損失を止めるために、(1)生物多様性の状態を科学的知見に基づき地球規模で分析・把握する。生態系サービスの恩恵に対する理解を社会に浸透させる (2)生物多様性の保全に向けた活動の拡大を図る。将来世代にわたる持続可能な利用の具体策を広く普及させる。人間活動の生物多様性への悪影響を減少させる手法を構築する (3)生物多様性の主流化、多様な主体の参画を図り、各主体により新たな活動が実践される—ことを2020年までの短期目標として挙げた。

 生物多様性条約は、米国がいまだに批准していないことでも示されているように先進国と途上国の考え方の溝が深い。昨年12月の第15回締約国会議(COP15)で全加盟国が義務を負う合意に失敗した気候変動枠組み気候変動枠組み条約と同様の難しい問題を抱えている。「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という現行の「目標」は、02年の第6回締約国会議(COP6)で合意された。しかし、05年に条約事務局が公表した「地球規模生物多様性概況」では、15ある指標のうち改善されているとされたのは「保護地域の指定範囲」という指標ただ一つだけという進み具合となっている。

 日本提案は、「中長期」と「短期」に加え、9つの個別目標も示し、それぞれに全締約国が合意する目標達成のための手法と数値指標をCOP10で決定することを提案している。これらの合意づくりは難航が予想されるが、「都市における緑地面積」や「途上国に対する遺伝資源探索など技術協力の案件数」を数値目標に盛り込むなど議長国として日本の独自性を出そうとする狙いが提案から伺われる。

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