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高病原性鳥インフルエンザ発生早期検知システム開発

2009.10.07

 大きさが1円玉程度で重さも3グラム以下という小さな無線センサーを鶏に取り付け、養鶏場内の鳥インフルエンザ発生をいち早く検知できるシステムを産業技術総合研究所と農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所などの研究グループが開発した。

 このシステムの効果を実際に茨城県畜産センターの実験鶏舎内で確かめた結果、病原性が高いウイルスほど伝播しやすく伝播速度も速い、という従来の見方を覆し、今後の高病原性鳥インフルエンザ対策を考える上で貴重なデータも得られた。

 産業技術総合研究所の伊藤寿浩・研究グループ長、動物衛生研究所の塚本健司・上席研究員らが開発したシステムは、鶏の体温と活動量を測る無線センサ端末とこれらのデータを受信して養鶏場の鶏集団の健康状態を常時監視するネットワークから成る。従来の高病原性鳥インフルエンザウイルスと、近年、見つかった高病原性鳥インフルエンザウイルスをそれぞれ鶏に感染させ、このシステムで鶏の状態を監視した。

 この結果、2004年に分離されたウイルスに感染した鶏は、感染から死亡するまでの平均時間34時間と病原性が最も高く、続いて07年に分離したウイルスに感染した鶏が平均死亡時間57時間、古くから見つかっているウイルスの平均死亡時間は87時間であることが分かった。これらの鶏に見られる体温変化は、04年分離ウイルスに感染した鶏は発熱(約0.6度)がほとんど見られず、07年分離ウイルスは微熱(約1.4度)、従来型ウイルスは高熱(約2.5度)がそれぞれ2日間続くことが観測された。つまり、鶏の体温を監視することで感染したウイルスの病原性が高いかどうかを見分けられる。

 また病原性が高いウイルスほど伝播しやすく、伝播速度も速く、大量のウイルスが短期間に排泄されていたことも分かった。これまで感染後短期間で鶏を死亡させるウイルス、つまり病原性が高いウイルスほど、ウイルスが排泄される前に鶏が死亡してしまうため伝播しにくいと考えられてきたが、今回の実験結果は、逆に病原性が高いウイルスほどウイルス排泄量も多いため伝播性も高い、ことを示している。

 今回の研究開発成果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の研究課題「安全・安心のためのアニマルウォッチセンサの開発」の一環として得られた。

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