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統合失調症グリア細胞のわずかな異常も一因

2009.07.02

 統合失調症の主要な症状の一つである認知障害は、グリア細胞と呼ばれる神経細胞を取り巻く細胞のわずかな構造的な異常によってもたらされていることを、自然科学研究機構生理学研究所の研究チームが突き止めた。

 同機構の池中一裕教授(副所長)、田中謙二助教、宮川剛・客員教授らは、グリア細胞の一つの遺伝子にのみ異常のあるモデルマウスを使い、神経細胞間を電気信号が伝わる速さに異常がないかどうか調べた。この結果、信号の伝わるスピードは半減しており、電子顕微鏡で観察したところグリア細胞の構造にわずかな異常が見られることを発見した。わずかな異常というのは、神経細胞の突起に巻き付いているグリア細胞の端がきちんと閉じていないため一部がはみ出している状態になっていることだった。

 「神経細胞そのものではなく、グリア細胞のわずかな異常が統合失調症患者に見られるような異常行動(認知障害)にかかわっているというのは驚くべき結果だ」と研究チームは言っている。

 統合失調症は人口の1%程度に見られる代表的な精神疾患で、陽性症状(妄想や幻覚)、陰性症状(社交性の欠落)に加え、今回の研究にかかわる認知障害(作業記憶、空間学習、感覚統合の障害)が、3つの大きな症状と言われている。このうち妄想や幻覚などの症状は脳内の神経伝達物質ドーパミンの過剰分泌による可能性が高い、という研究結果を最近、放射線医学総合研究所の研究者が発表している。

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