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統合失調症はドーパミンの過剰分泌が原因か

2009.06.18

 統合失調症患者の脳にドーパミンが過剰に分泌されていることを、放射線医学総合研究所の研究者が陽電子断層撮影装置(PET)を使って確かめた。

 統合失調症の原因についてはさまざまな説が提出されているが、決定的なものはない。今回の研究結果は、統合失調症の典型的な症状である幻覚、妄想などが脳のドーパミン過剰によって生じるというドーパミン仮説の一部を証明するものだ、と研究者たちは言っている。

 放射線医学総合研究所分子イメージングセンターの荒川亮介・博士研究員らは、ドーパミン分泌量を調節する役割を果たしているタンパク(ドーパミントランスポーター)の量が脳の中でどのように変化しているかをPETで調べた。

 この結果、統合失調症の患者は、健康な人に比べ、脳の情報統合部位である視床でドーパミントランスポーターの量が多く、さらに重症の患者ほど量が増加傾向にあるという結果が得られた。

 ドーパミンは中枢神経系に存在する神経伝達物質で、欠乏するとパーキンソン病の原因になることでも知られる。これまで統合失調症との関係が仮説の段階にとどまっていたのは、PETを初めとする画像診断では脳内の線条体という限られた場所でしかドーパミントランスポーターの量が調べられなかったため。荒川研究員らは、最近スウェーデンで開発された放射性標識薬剤を使い脳のさまざまな部位でドーパミントランスポーターの量を測定することに成功した。

 ドーパミントランスポーターは、神経細胞から放出されたドーパミンを細胞内に取り込む働きをしている。荒川研究員らは、統合失調症患者の視床ではドーパミントランスポーターが増へ、ドーパミン神経の活動が過剰になった結果、情報の統合に乱れを生じさせ、統合失調症の重大な原因となっている可能性が高い、とみている。

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