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ミリ以下のがん見分ける検査法開発

2008.12.09

 非常に小さながん細胞まで見分けることができる「検査分子」を、浦野泰照・東京大学大学院薬学系研究科准教授らが開発した。さまざまながん細胞に適応できる汎用性と、これまでの検査法に比べはるかに高いがん検出能力を持つことから、将来、実際のがん臨床に画期的な役割を果たすと期待されている。

 浦野准教授が小林久隆・米国立衛生研究所(NIH)主任研究員の協力を得て開発に成功したのは、がん細胞に取り込まれたことを検知して初めて光り出す小さな有機プローブ分子で、小さな分子である蛍光プローブと、大分子(抗体など)の組み合わせから成る。プローブを変えることによって蛍光の色を、大分子を選択することで調べたいがんの種類を選べることから、いろいろながんの検出が可能になる。

 これまでがん診断には、PET(陽電子放出断層撮影)やMRI(核磁気共鳴イメージング)が、広く利用されてきた。しかし、これらは投与されたプローブが、すべてがん細胞だけに取り込まれないため、検出できるがんの大きさがセンチメートルまでという限界があった。これに対し、浦野准教授らが開発した検査分子は狙ったがん細胞にしか取り込まれないため、ミリメートル以下の小さながんまで検出できるのが特長。さらに、蛍光を発するのはがん細胞が生きている間だけ、つまり開発した「検査分子」はがん細胞が生きているかどうかを見分けられることから、治療効果をリアルタイムで確認しながら手術を行うことも初めて可能になる。

 浦野准教授らは、すでに微小がんを持つモデルマウスを使い、蛍光内視鏡を使って生きている状態でリアルタイムに微小がんを検出し、除去する疑似手術に成功している。

この研究成果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業・個人型研究(さきがけ)で得られた。

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