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はるばる来たぜカムチャッカへ

2008.07.04

 小笠原諸島聟島で人工飼育され、5月に巣立ったアホウドリのヒナが、カムチャッカ半島の東部まで飛来しているのが、山階鳥類研究所の追跡調査で明らかになった。

 アホウドリのヒナは、繁殖地の鳥島から2月に生後40日程度で聟島に移送され、人工飼育された後、5月に10羽すべてが巣立った。このうち5羽に人工衛星で追跡可能な発信器が取り付けられているが、4羽について巣立ち後の位置と移動経路が確認されている。最短距離に近いルートをとるヒナ、回り道をするヒナとさまざまだが4羽とも予想された通り北方を目指し、6月30日現在、最も遠くまで渡ったヒナは、聟島から約3,900キロ、カムチャッカ半島付け根の東方まで到達しているのが分かった。

 比較のため鳥島から巣立った野生のヒナ5羽にも発信器が付けられたが、聟島の人工飼育組と野生のヒナとの巣立ち後の行動には大きな違いがないことも確認された。

 アホウドリは、かつては北西太平洋の島々に数十万羽いたと考えられているが、羽毛目当ての乱獲の結果、一次は絶滅寸前にまで追い詰められた。現在でも尖閣諸島と鳥島だけに2,000羽程度しか生息していない。生息数の多い鳥島で噴火活動が起きると再び絶滅の恐れが大きくなることから、山階鳥類研究所が米国魚類野生生物局と環境省の支援を受けて、かつて繁殖地の一つだった聟島へのヒナの移住作戦をことしから始めた。

 5年ほど後に人工飼育されたヒナが成長し、繁殖のため聟島に戻って来るのを、山階鳥類研究所の研究者たちは期待している。

人工衛星で追跡したアホウドリのヒナの軌跡。赤・ピンク・黄緑・黄色は聟島で人工飼育されたヒナ。白は鳥島の野生ヒナ (提供:山階鳥類研究所)
人工衛星で追跡したアホウドリのヒナの軌跡。赤・ピンク・黄緑・黄色は聟島で人工飼育されたヒナ。白は鳥島の野生ヒナ (提供:山階鳥類研究所)
最初に聟島から巣立ったアホウドリのヒナ
最初に聟島から巣立ったアホウドリのヒナ (提供:山階鳥類研究所)

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