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土壌乾燥で森林のCO2放出量増加

2008.04.24

 地球温暖化対策で大きな鍵を握るといわれている森林は、樹木の種類や気象変動により二酸化炭素(CO2)の吸収量が大きく影響されることが、国立環境研究所、産業技術総合研究所などの観測によって明らかになった。

 平田竜一・国立環境研究所ポスドクフェロー(現・農業環境技術研究所特別研究員)、三枝信子・産業技術総合研究所主任研究員(現・国立環境研究所陸域モニタリング推進室長)らは、国内研究機関・大学と共同で、日本、ロシア、モンゴル、マレーシア、タイなど東アジアの森林を数年間にわたって観測した。このように広い緯度帯の多種多様な森林のCO2吸収量を長期にわたって連続観測し、総合的な解析を行った例は世界的にほとんどなく、森林と気候変動との関係を解明する上で貴重なデータになるとみられる。

 今回の観測で、明らかになったことの一つは、東南アジアの熱帯季節林で乾季が長期化し降水量が減少すると、光合成生産量の大きな低下が観測されたこと。降水量減少が落葉を促進させたためと考えられ、気温上昇が土壌乾燥をもたらし大気中のCO2量をさらに増やす可能性もあることが実際のデータから強く示唆された。

 また、日本国内の落葉広葉樹林(岐阜県高山)では、冬季は光合成が行われなくなり、呼吸などにより大気中に放出されるCO2の方が多くなることが確かめられた。一方、常緑針葉樹林では年間を通じて光合成が行われるため、大気中に放出されるCO2量が多くなる期間は短い。また、熱帯林(マレーシア)では、光合成によるCO2取り込みが多い時季と逆に放出が多い時季の両方が見られたものの、季節変化の差は亜寒帯、温帯の森林と比べて小さく、年間を通じ大気中へのCO2の出入りはそれほど変動がないことも分かった。

 森林による1年間のCO2の収支を異なる気候帯で比較すると、光合成により吸収されるCO2量は、年平均気温が高いほど直線的に増加する。他方、植物の呼吸や土壌中の有機物分解によって放出されるCO2量は、年平均気温が高いほど指数関数的に増加し、両者ともに年平均気温により強く影響を受け、他の環境要因からの影響は小さいことがわかった。

 今回の観測で用いられたのは、微気象学的方法(渦相関法)と呼ばれるもので、農耕地や森林の中に建設された数メートルから数十メートルのタワー上に設置された超音波風速温度計と赤外線ガス分析計を用いる。大気中のCO2吸収量を無人で連続的に直接観測し、吸収量の日変化や季節変化を測定できることから、広範囲の測定に向いているといわれる。

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