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超撥水性持つフラーレン材料開発

2008.01.24

 炭素だけからなるナノ物質として注目されているフラーレンを利用し、表面で強く水をはじく性質を持つ材料を物質・材料研究機構の中西尚志・主任研究員らが開発した。

 表面で水をはじく性質は撥水性と呼ばれ、自然界ではハスの葉がよく知られている。フラクタル構造と呼ばれる凹凸に富む表面のため、水滴のようにしかなれない表面の水がほこりを取り込んでしまう。この結果、ハスの葉の表面はいつもきれいに保たれている。

 新しく開発された材料は、フラーレン上にひものように長いアルキル鎖という構造を3本はやした分子を合成するという簡単な方法で、ハスの葉のような撥水性を持たせることができる。薄膜にする方法も簡単で、この薄膜はどんな基盤にも付着でき、さらに100℃の大気中あるいは酸性、塩基性の溶液に浸しても撥水性能は落ちないことが確認された。

 防水性、防曇性、防湿性、防着氷雪性、防食性、防カビ性などが要求される各種部材や製品に利用が可能、と期待されている。これまで同様な超撥水性を持つ材料としてはフッ素系ポリマーが知られていたが、環境保護という観点からもフッ素を含むものよりフラーレンを利用した材料の方がすぐれている、と研究チームは言っている。

 フラーレンはサッカーボールのような球面体をしたC60に代表される微少(ナノ)物質で、特殊な電気的特性を持つことなどからさまざまな応用が期待されている。多くの研究が進められているが、自己凝集といった別の厄介な特徴などもあってフラーレンそのものを材料として用いる応用例はいまだにない。

超撥水性材表面の走査型電子顕微鏡像
超撥水性材表面の走査型電子顕微鏡像 (提供:物質・材料研究機構)

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