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サルは顔を特別に識別する機能持つ

2008.01.01

 サルの赤ちゃんは、サルやヒトの「顔」を他の対象と区別して認識することができ、それは実際に「顔」を見る前から備わっている機能であることを、産業技術総合研究所の研究者たちが突き止めた。

 さらにひとたび実物の顔を見てしまうと、最初に見た方が「身近な顔」となり、わずかな顔立ちの違いの区別も簡単にできるようになるという興味深い事実も明らかになった。

 産業技術総合研究所の杉田陽一・認知行動科学研究グループ長らは、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業・チーム型研究(CREST)「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」の一環として、サルが顔と表情をどのように認識するかを実験で調べた。

 まず、飼育者の顔を覆ってサルから見えないようにした状態で半年から2年間、サルを育てた。このサルに、サルあるいはヒトの顔写真と、自動車や時計、風鈴といった顔に関係のない写真を同時に見せたところ、サル、ヒトにかかわらず顔写真の方を長く注視した。これは、顔の方に、顔以外の物体よりサルが興味を抱くことを示している。

 また、一つの顔写真を長い間見せた後で、同じ写真と別の新しい顔写真を見せると新しい写真の方を長く見続けることも分かった。さらに眼や口を他のサルあるいはヒトのものと入れ替えたり、両目や目と口の間隔を変えたりした写真を見せると、わずかな変化でもしっかり識別することも同じ実験法によって分かった。

 これらの実験結果は、わずかな顔の違いを見分けることができることを示しており、そのサルがそれまで実際にヒトやサルの顔を見たことがない期間の長さにかかわらず同じだった。

 次にこの実験を行ったサルに、実物の顔を1カ月間見せた後、同様の実験を行ったところ、ヒトの顔だけを見せた場合には、ヒトの顔写真は好んで見続けるものの、サルの顔写真には興味を示さなくなった。さらに前に見た写真と新しい写真の違いもヒトについては区別できたが、サルについては全くできなくなってしまった。

 これらの結果は、顔の印象(鋳型)は、顔を見たことがなくても形成され、実際に実物の顔を見た後は、身近な顔の特徴だけを迅速に処理するように特殊化されていくことを示している、と研究チームは言っている。

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