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単一の遺伝子導入で幹細胞活性化に成功

2007.12.19

 骨髄から得られる間葉系幹細胞に単一の遺伝子を導入することにより、増殖・分化能力を活発化させることに産業技術総合研究所などの研究チームが成功した。

 間葉系幹細胞は、受精卵から得られる胚性幹細胞(ES細胞)と異なり、成人に存在する。未分化な細胞で筋肉、骨、脂肪などさまざまな細胞に分化できる能力を持っていることから、骨髄に存在する間葉系幹細胞を用い、骨、軟骨、心筋を再生させる臨床応用が産業技術総合研究所と大学病院などとの連携で始まっている。しかし、間葉系幹細胞の増殖・分化能力は、細胞を採取後、数週間で激減してしまうことが臨床応用の大きな壁になっていた。

 産業技術総合研究所セルエンジニアリング研究部門の大串始・主幹研究員とステムセルサイエンス株式会社の郷正博・主席研究員(当時)らは、増殖と分化能力の低下した幹細胞にレトロウイルスを用いてNanog とSox2という遺伝子を導入した。この結果、Nanog遺伝子を導入した細胞は、元通りあるいはそれ以上の増殖能力と骨に分化する能力を回復した。また、Sox2遺伝子を導入した細胞も、b-FGFというタンパクと培養することで同様に増殖・分化能力を回復することが確かめられた。

 幹細胞の研究では、先月、山中伸弥・京都大学教授のチームと、米ウィスコンシン大学のチームが、それぞれヒトの細胞に4つの遺伝子を導入する方法で、さまざまな組織に分化する能力を持つ多能性細胞(iPS細胞)作り出すことに成功している。Sox2遺伝子は、山中教授も4つの遺伝子の一つとして使っており、Nanog遺伝子はウィスコンシン大学チームが4つの遺伝子の一つとして使っている。

 研究チームは、単一の遺伝子を使うことや、用いた細胞はすでに臨床応用されている冷凍保存細胞であることなどを挙げて、早期の臨床応用が可能な成果だと言っている。今後、遺伝子導入の方法などの改良を行い、2010年をめどに種々の難治性疾患患者への移植(臨床応用)を目指す、としている。

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