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特集:量子の地平線

掲載日:2013年6月26日

量子の地平線
    量子力学は予測において雄弁だ。実験で何が起こるかを正確に言い当てる。だが理由については寡黙で、その方程式にどんな意味があるのか、なぜその予測でよいのかは教えてくれない。量子力学の数学は、整合的な解釈を阻むようにすら見える。得心のいく説明はあるのだろうか。本特集では、量子力学を理解する3つの方向を紹介する。

    名古屋大学の谷村省吾氏は、物理的な意味を持たない数学そのものに、量子世界の本質が表れているとみる。数学を無理に物理的に解釈するのではなく、1つの数学的性質そのものから、私たちがすむマクロな古典世界と、光子や電子のミクロな量子世界の違いを直接説明する。2つの世界は異質だがその間に境界線はなく、「投げたボールが飛んでいく」などのマクロな現象も、背後にあるミクロな量子世界の数学的性質が引き起こしているという。

    芝浦工業大学の木村元氏は、天下り的な数学で語られる今の量子力学に満足せず、その根本にある物理的な原理を模索している。数学的に可能な理論は無数にあるが、現実世界では量子力学だけが実現している。そこには何らかの理由があるはずで、おそらく情報の伝達や取得にかかわるものだという。その理由を見つけて実験で確かめれば、量子力学は直観的に理解できるようになると予測する。

    米ウィリアム・アンド・メアリー大学のハンス・フォン・ベイヤー氏は、量子力学の数学は、観測される物体ではなく、観測する人間の側を語ると考えると納得できるという。「Qビズム」と呼ばれるこの見方によると、量子力学の波動関数は、人の心を記述する。

    量子力学の理解の仕方は、研究者の数だけあると言っても過言ではない。本特集で、量子力学の輪郭を想像して頂けたら幸いである。

 

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