マガジン - 日経サイエンス誌ダイジェスト -

宇宙の時間が終わるとき

掲載日:2010年11月2日

宇宙の時間が終わるとき

    「時間」は行進曲のようなものだ。倦まずたゆまず、未来永劫、同じペースで刻み続ける──と、普通は考えられている。だがアインシュタインの相対性理論によれば、時間は気まぐれな即興曲だ。物体の状況や動きによって加速も減速もし、超特急で飛び去ることもある。

    従って、もし宇宙に大変動が起きれば、時間もまた大きく様相を変えることになる。宇宙は137億年前にビッグバンとともに始まったとされるが、では遠い未来、宇宙は最終的にどんな形になり、そのとき、時間はどうなるのだろう。宇宙の時間に、終わりは来るのだろうか?

    相対性理論によれば、宇宙はいずれ何らかの「特異点」に達し、時間にも終わりが来るはずだ。そのシナリオは、色々と提唱されている。例えば、ビッグクランチだ。これによれば、宇宙はビッグバン以来ずっと膨張し続けているが、やがて物質間に働く重力の方が勝って収縮に転じ、最後は宇宙全体が一点に潰れて、ビッグバン前の状態に戻る。宇宙は消滅し、時間もそこで終わる。

    このほか宇宙が永遠に膨張し続けるビッグウィンパー、宇宙にあるものすべてが動けなくなるビッグフリーズ、物質がすべてバラバラに砕け散るビッグリップなどが考えられている。時間がどうなるかは必ずしも定かでないが、今のままでは存続できないことは確かだ。

    だが一方で、特異点は理論的には起こり得ても、現実には実現しないとも考えられている。特異点では密度など何からかの量が無限大になるが、本当に無限大を実現するのは、物理的に不可能だからだ。特異点に似た大変動は起きるにしても、特異点そのものにはならないだろう。その場合、時間はどうなるのだろうか?

    おそらく、現在時間の性質だと考えられているもの──過去から未来へと流れる性質、何かの継続時間を測れる性質、物事が起きた順番を決められる性質など──がひとつひとつ消えていくだろう。それは時間の「緩慢な死」をと言えるかもしれない。

 

ページトップへ