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マガジン - 日経サイエンス誌ダイジェスト -

心の病も早期診断早期治療

掲載日:2010年6月9日

日経サイエンス7月号 iPS細胞 急進展する研究
  • うつ病にかかると気分が落ち込んだり、ものも食べたくなくなったりする。ひどくなると自殺を企てることもある。強迫性障害の患者さんの中には、自分は汚れていると思いこんで、皮膚が赤むけてしまうまで手を洗い続けたりする人もいる。家庭内暴力などで心的外傷後ストレス障害(PTSD)になると、ふとしたきっかけでパニックに陥ることもある。

    これらの疾患は、これまでの診断技術によっては脳に明確な損傷が認められなかった。それが近年、脳画像による研究などの進歩によって、意思決定や道徳的判断、恐怖の抑制などに関係する脳神経回路の異常な活動が、こうした心の病の原因であることが明らかになってきた。

    例えば、うつ病では前頭前皮質の「領野25」と呼ばれる小さな領域の活動が過剰になっていることがわかった。この領域は、恐怖や記憶、自尊心をつかさどる他の脳中枢の活動レベルを感知・調整している。強迫性障害では前頭皮質と大脳基底核の一部で活動が過剰になっていることが明らかになってきた。PTSDでは前頭前皮質腹内側部と呼ばれる領域の機能不全とのつながりが見えてきた。

    精神疾患が科学的に解明されることで、がんや心臓病などと同様、画像分析などによる早期診断や、より根本的な治療への道が開かれる。精神疾患に一般の人々が抱くイメージも変わってくることになるだろう。

 

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