サイエンスポータル SciencePortal

マガジン - 日経サイエンス誌ダイジェスト -

脳の中の暗黒エネルギー

掲載日:2010年5月3日

日経サイエンス6月号 脳の見えざる活動
  • 灯台下暗し(とうだいもとくらし)ということわざは、私たちの脳についてもあてはまる。脳細胞一つひとつまで見えるが、どのように働いているのかわからない。その「わからなさ」は宇宙に通じる。宇宙の全エネルギー量は見積もられていて、その中で、私たちが知っている物質、つまり星や宇宙を漂う塵やガスなどは、全部集めて、その質量をエネルギーに換算しても、全体の数%を占めるにすぎないことがわかっている。残りのうち大半は「暗黒エネルギー」という正体不明の存在が占める。

    一方、脳は大量のエネルギーを消費しているが、これまで知られている脳の働きに関するエネルギー消費を全部足し合わせても、全消費量の数%にとどまることがわかっている。実は脳がどんなことにたくさんのエネルギーを消費しているのかわかっていないのだ。脳科学者の著者は、天文学者と相談の上、その未解明のエネルギー消費を「脳の暗黒エネルギー」と呼ぶことにした。ただ、宇宙の暗黒エネルギーは解明のめどが立っていないが、脳の暗黒エネルギーの方は著者らの奮闘もあって光が当たってきた。そのエネルギーはいわばオーケストラの指揮者のような働きに費やされているようだ。その働きがうまくいかないことが、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患の一因となっている可能性も見えてきた。

 

ページトップへ