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マガジン - 日経サイエンス誌ダイジェスト -

ノーベル賞に輝いたクラゲの光

掲載日:2009年10月23日

日経サイエンス11月号 曲がった時空の不思議な性質
  • 昨年ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士はその半生において、さまざまな光の輝きと出会った。

    戦時中、中学生だった若き博士は、長崎で原爆のまばゆい閃光に目をくらまされ、その焼け跡で2年間、あてもない日々を送った。絶望の末、師との運命的な出会いを経て、海中で美しく輝くウミホタルの青い光の解明に人生を賭けることを決意する。そして、研究の先進地である米国でもなし得なかったウミホタルの発光物質ルシフェリンの結晶化に成功、さらに渡米してからオワンクラゲの緑色の光に出会い、その研究が実ってノーベル賞の輝きを受けることになった。

    博士がオワンクラゲから発光物質の抽出に成功し、ノーベル賞の受賞業績となった緑色蛍光タンパク質GFPを発見するまでには、博士一家とプリンストン大学の同僚のチームによる気の遠くなるほどの時間と労力を傾けたクラゲ採集と発光物質の抽出作業があった。その物語は、新聞などでも報じられているが、博士自身がつづった文章を読むと、それがいかに大変なことであったのかがよくわかる。

    同時に実感するのは、博士が研究の拠点とした風光明媚な北太平洋の内湾の海の豊かさだ。博士の文章を読むと海からクラゲが湧き出ているかのような印象を受ける。博士のノーベル賞は“海の賜物”と言えるかもしれない。

 

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