マガジン - 日経サイエンス誌ダイジェスト -

見えた!奇妙きてれつ量子の世界

掲載日:2009年8月26日

日経サイエンス10月号 存在確率マイナス1
  • 物理学者アハラノフの名は知らなくても、「アハラノフ・ボーム効果」という言葉は聞いたことがあるかもしれない。1980年代、日立製作所の研究者である外村彰氏が検証に成功し、ノーベル賞級の成果として注目を集めた。50年前、この効果を量子力学の建設者の1人、ボームとともに予言したのが当時20代のアハラノフ氏(右は近影)だった。

    後年、氏はもう1つの予言をした。これまで「決して見ることはできない。見たら壊れてしまう」と誰もが信じてきた量子の世界を、壊れないようにこっそり見る方法があるというのだ。これを「弱い測定」と呼ぶ。しかも、ある種の実験装置(干渉計)の中で起きている現象(左上はイメージ図)について、弱い測定を行うと、粒子が特定の場所に存在する確率が「マイナス1」になるという。

    確率というのは、本来0と1の間の値しかとり得ず、その予言は一見不可解だが、このほど日本とカナダのチームがそれぞれ実験で確かめた。

    量子力学の実像に迫る今回の特集は3本の記事で構成。第1部「存在確率マイナス1 天才アハラノフの予言」ではアハラノフ氏が疑問符を突きつけた今日の量子力学の“常識”について解説する。量子力学が語る世界とはどんなものか、なぜ見ることはできないと考えられるようになったのか、その歴史的経緯を振り返る。またアハラノフの予言を巡る近年の動きを紹介する。

    第2部「宇宙の未来が決める現在」はアハラノフ氏へのインタビュー。量子力学の固定観念を覆した予言の詳細について本人が語っている。また、氏が提唱する弱い測定の概念は、量子力学と一般相対性理論を総合的に理解するための有力な手がかりになる。この点について、東京工業大学の細谷暁夫教授らに解説いただいた。

    第3部「量子の“開かずの間”をのぞき見る」では、存在確率マイナス1を観測した実験について、当事者である大阪大学の井元信之教授(左下)らに寄稿いただいた。

 

ページトップへ