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マガジン - 日経サイエンス誌ダイジェスト -

ヒトとサルを分けた「0.5%」の中身

掲載日:2009年7月6日

日経サイエンス8月号 実用間近に迫ったiPS細胞
  • 600万年前、アフリカの森にすんでいた霊長類の1つのグループが木から下りた。今、そのグループは私たち人類となり、森に残ったグループはチンパンジーとなった。チンパンジーは昔と変わらず木陰などで夜露をしのいでいるが、人類は都市を建設、自身を構成する生命の設計図、ヒトゲノム(全遺伝情報)を解読するに至り、さらには、親類とも言えるチンパンジーのゲノムをも解読した。

    共通の祖先から出発して600万年、DNAの形で保存されている設計図にどのような“変更”が加えられて人類となったのか? 人類は自身のゲノムとチンパンジーのゲノムを突き合わせてみた。驚いたことに、約30億塩基対からなる両ゲノムのほとんどの部分はまったく同じだった。違っていたのは1500万塩基対の配列だけ、30億塩基対に占める割合はたったの0.5%だ。

    ヒトとチンパンジーは設計図はほとんど同じなのに、身長も見かけも知能もかなり違う。逆に言えば0.5%という設計変更部分は、生物のあり方そのものに影響を及ぼすほど重要なものであることがわかる。著者によると、最重要と考えられるのは、脳のしわの形成に関与する設計変更だという。

    ゲノムは遺伝子(生物の構成部品であるタンパク質の設計図)と、遺伝子以外の領域に分けられる。後者の領域には、必要な時期に遺伝子を目覚めさせてタンパク質を作らせたり、タンパク質が不要になったら遺伝子を眠らせたりするための情報などが書き込まれている。そして脳のしわの形成に関与する設計変更は後者の領域にあった。人類は脳のしわを作る遺伝子の“働き方”が、チンパンジーとはかなり違っているらしい。

    このほか、脳の大きさを制御する領域などにも重要な設計変更が加えられたこともわかってきた。

 

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