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どうほぐす量子の“もつれ”

掲載日:2009年4月24日

日経サイエンス6月号 量子もつれ
  • この世において光より速いものはない──。光速不変の原理はアインシュタインの特殊相対性理論の根本であり、その正しさはさまざまな実験で検証されている。  20世紀初頭、この相対性理論とともに、もう1つ、私たちの自然観を根本から変えることとなった理論が登場した。ミクロの世界の物質の振る舞いを説明する量子力学だ。

    量子力学は、現代文明を支えるコンピューターなどの電子機器に使われる半導体チップの動作原理となっており、その正しさを疑う研究者はいない。

    しかし、アインシュタインは生涯、量子力学に疑いの目を向け続けた。量子力学を批判して「神はサイコロを振らない」と語ったとも伝えられている。そのアインシュタインが問題視したのが「量子もつれ」だった。

    電子や光子は一種の自転をしていて、うまい実験操作をすると、各々の向きは決まってはいないが、互いに逆向きに自転するペアを作ることができる。ペアはある種の結びつきがあって、例えば一方の粒子を測定して右巻きだとわかった瞬間、他方の粒子は、いわばそのことを“察知”して、左巻きに自身の回転の向きを定める。こうした現象を量子もつれという。

    量子もつれの特徴は、ペアの間の距離を引き離して、理論的には銀河の両端に置いたとしても、ペアとしての関係が崩れないこと。その状態で、ペアの一方を測定して右巻きとわかった瞬間、銀河の向こう側にいる相方は左巻きになる、といったことが起こると考えられる。これは特殊相対性理論を破っているようにも見える。

    だが、1980年代、量子もつれは実験で検証され、正しいことがわかった。では、量子もつれと特殊相対論の関係をどう理解すればよいのだろう? 謎は解けていない。

 

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