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マガジン - 日経サイエンス誌ダイジェスト -

がんを「システム変調」として見る

掲載日:2009年4月9日

日経サイエンス5月号 土星の月で発見 巨大噴泉の謎
  • 人体は複雑精妙なシステムだ。有機物(食物)を分子レベルに分解し、空気中から摂取した酸素とともに大小のパイプライン(血管)で全体に行き渡らせる。そして、それぞれの場所(細胞)でエネルギーを生産し生命維持のための生化学反応を行う。

    ある程度のトラブルは自己修復できるが、ときに局所で発生した反応システムの変調が関連部分に及び、それが広まってシステム全体に深刻な影響を与えることがある。「がん」はこんなイメージでとらえることもできる。

    がん組織の活動による反応システムの変調は段階的に変化するので、パイプライン(血管)内部を流通する各種分子の濃度などをモニターすれば、原理的には、どんなタイプのがんが、どの場所にどれほど存在しているのか把握できる。

    これまでは夢物語のような話だったが、ナノテクノロジーによる検査技術の進展で、生化学反応システムとしての人体の変調を正確に把握し、その情報をもとにピンポイントで治療薬を送り込むことも不可能ではなくなってきた。現在、1万分の1mm以下のサイズの機構を使って、微量血液やたった1つの細胞から多数の生体分子を取り出し、迅速正確に操作・測定する技術や、ナノカプセルで薬を届ける技術の開発が進んでいる。

 

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